強まる金融3社の経営介入 三洋電機 “井植一族追放”へ

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強まる金融3社の経営介入 三洋電機 “井植一族追放”へ

三洋電機は井植敏雅社長の辞任を発表した。敏雅氏は「金融機関の信任を得られなかった」と語るが、当初から評価が低かったわけではない。交代劇の背景にあるものとは--。(『週刊東洋経済』4月7日号より)

 「再建に不可欠な投資家や金融機関の継続的な信任を得られなかった。社長としての私の役目は終わったと株主は判断されたのだろう。改革をやるために社長になったにもかかわらず、井植という名前が(世襲批判の報道によって)古い体質の代名詞のように受け取られたのは痛恨の極みだ」

 経営再建中の三洋電機は3月28日、井植敏雅社長が4月2日付で社長を辞任し、後任に人事担当の佐野精一郎執行役員が就くトップ人事を発表。会見の冒頭、敏雅氏は険しい表情で辞任の理由を語り、“意図せざる退任”の無念さをあらわにした。

 三洋は井植歳男氏が終戦直後の1947年に大阪で創業して以降、井植一族が常にトップに君臨。敏雅氏の辞任で三洋の創業以来初めて社長、会長から井植一族の名前が消える。同氏は6月の株主総会後に取締役も辞任する見通しで、井植敏元会長の最高顧問退任も確実。60年間にわたって続いた創業家による世襲経営は幕を下ろした。

 同社は2004年度決算で巨額赤字に転落。会長だった敏氏は、キャスター出身の野中ともよ氏を後任の会長に、息子の敏雅氏を社長にそれぞれ指名し、両名に三洋の再建を託した。しかし、野中氏は今年3月19日に辞表を提出して会長を辞任、創業家の敏雅氏までも辞任に追い込まれた。

 相次ぐトップ辞任の背景にあるのは、大株主の金融団との対立だ。

 経営危機に追い込まれた三洋は昨年春、メインバンクの三井住友銀行と米投資銀行のゴールドマン・サックス(GS)、大和証券SMBCの金融3社を引受先として総額3000億円の第三者割当増資を実施。増資の結果、金融3社の議決権比率は6割超にまで達したうえ、3社は役員を三洋に送り込み、取締役の過半を占有。増資のおかげで三洋は倒産の事態を免れたが、代償として経営の実権を金融団に握られた。今回の井植社長の辞任劇は、金融団が辞任を強く迫ったからにほかならない。

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