(第5回)風邪・インフルエンザ対策法・その2

山崎光夫

 風邪・インフルエンザについては、基本的に、体の免疫力を高めておけば、寄せつけずにすむと考えている。前回で紹介した、風呂での水タオルや水かぶりの習慣は、風邪の“門前払い式”の発想である。
 このあたりが、エイズと違うところである。エイズでは、現在、ワクチンは開発されておらず、避妊具(コンドーム)で予防するしかない。エイズ保菌者と性的接触した場合、いくら体の免疫力を高めておいても染るときは染ってしまう。

 風邪は奈良時代以前からこの日本に発生している。「シワブキ」「咳病(がいびょう)」「風疾」などと呼ばれていた。古くて新しい病気が風邪である。
 どっこい、風邪も生きているのである。「風邪は万病の元」というが、風邪自身にしてみれば、「万年生き続ける」という気持ちであろう。
 風邪の中でも、突然発症し、症状が重く、人から人に伝染して流行するのがインフルエンザ。流行性感冒(インフルエンザ)という表現が使用されるようになったのは明治二十三年(一八九〇)からといわれている。
 インフルエンザの感染経路は、飛沫(ひまつ)・接触感染である。保菌者の咳やくしゃみを浴びたり、分泌物に触ると染る。潜伏期は普通1~2日で、発症後、3日間は感染力を持つ。罹ったら感染力のある間は人と接触しないか、防ウイルス性のマスクをするのが礼儀であろう。

 わたしは風邪・インフルエンザの予防法として、うがい、手洗いの励行は当然として、「マ」のつく三つのもので予防している。これを“三マ(さんま)主義”と名付けている。
 わたしの“三マ”は、「マスク、マフラー、マッサージ」である。
 まず、マスクであるが、三枚入り二百円程度の物しか使わない。目的は、湿度の保持。これだけである。
 インフルエンザウイルスは湿度に弱く、カラカラ天気が大好きな生き物。冬季の病院は、「一雨降ると待合室がガラガラになる」という。一雨でインフルエンザウイルスの感染力は弱まり、人々は医者のお世話から遠ざかる。かくして、お医者さんの懐が淋しくなるらしい。それくらい、降雨による湿度の維持はインフルエンザの流行を抑制する。

 次は、マフラー。司馬遼太郎さんは愛用のバンダナを首に巻いて予防され、いま、記念館でも販売しているようだ。予防法として理に適っている。わたしは低価格のマフラーを常時、首に巻いている。マフラーは咽頭部の粘膜を一定の温度に保つ効果がある。これとは逆に、寒いなかでうたた寝して目覚めると、寒気とともに咽頭部に痛みを覚える。これは体温が低下して生体防御が弱まって、ウイルスの侵入を許してしまったといえる。首の保温は予防効果絶大である。

 三つ目は、経穴(つぼ)へのマッサージである。「肺兪(はいゆ)」というツボを指圧しつつマッサージする。背中に風邪予防のツボがあるとは昔からきいていたが、これがそのツボである。
 鍼灸師にきくと、「肺兪は正式には、第3胸椎棘突起(きょうついきょくとっき)といいます」
 と教えてくれた。
 舌を噛みそうなこのツボは、肩甲骨の真ん中付近の両側に指をすべらすと感じる個所がこれである。呼吸器関係のエネルギーが入る場所とされていて、風邪・インフルエンザの予防と治療のツボである。
 しかし、いざこのツボを自分で押すとなると、体にかなりの柔軟性が求められる。肩口から腕をまわさねばならない。
 家族に押してもらうのもよい。だが、家族の協力を得られない向きは、畳に置いたゴルフボールの上に仰向けに寝て背中を押す、“逆亀の子スタイル”でいかがだろう。
 風邪・インフルエンザの予防法として、最も感染しやすい小児や高齢者は別にして、この“三マ”でおおかたは予防、対処できるはずだ。
山崎光夫(やまざき・みつお)
昭和22年福井市生まれ。
早稲田大学卒業。放送作家、雑誌記者を経て、小説家となる。昭和60年『安楽処方箋』で小説現代新人賞を受賞。特に医学・薬学関係分野に造詣が深く、この領域をテーマに作品を発表している。
主な著書として、『ジェンナーの遺言』『日本アレルギー倶楽部』『精神外科医』『ヒポクラテスの暗号』『菌株(ペニシリン)はよみがえる』『メディカル人事室』『東京検死官 』『逆転検死官』『サムライの国』『風雲の人 小説・大隈重信青春譜』『北里柴三郎 雷(ドンネル)と呼ばれた男 』など多数。
エッセイ・ノンフィクションに『元気の達人』『病院が信じられなくなったとき読む本』『赤本の世界 民間療法のバイブル 』『日本の名薬 』『老いてますます楽し 貝原益軒の極意 』ほかがある。平成10年『藪の中の家--芥川自死の謎を解く 』で第17回新田次郎文学賞を受賞。「福井ふるさと大使」も務めている。
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