東京電力の新たな再建計画は画餅 原発再稼働が遅れたら料金値上げでは反発必至

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新潟県知事は東電の計画を強く批判

昨年9月に申請が規制委に受理された柏崎刈羽原発6、7号機の審査はほとんど進んでいない。敷地内の断層調査次第では審査が長期化し、活断層と認定されれば廃炉を余儀なくされる可能性もある。

再稼働に反対する泉田知事を説得することも困難だ。同知事は、中越沖地震に伴う柏崎刈羽原発の変圧器火災・放射能漏れに直面した経験もあるだけに、東電に対する不信感はもともと根強い。

東日本大震災後は、「福島第一原発事故が収束せず、事故の検証、責任追及が不十分なままでの再稼働は到底、国民の理解が得られない」と一貫して主張。特に、福島第一原発の炉心溶融(メルトダウン)の公表が事故発生から約2カ月も遅れた理由を東電が明らかにしないことを強く批判している。

そして、1月16日に廣瀬直己・東電社長から新総特の説明を受けた泉田知事はツイッターでこう書いている。

「東電は、進展予測などから事故当初からメルトダウンを認識できていました。実際に認めたのは2カ月後で、大勢が不要な被爆を強いられました。情報隠蔽に至った経緯の解明を求めたところ、廣瀬社長から、国から圧力があった旨の説明がありました。今後、具体的な経緯を確認したいと思います」。

「国からの圧力」の内容など、この問題は単に「新潟県知事vs東電」の対立だけにとどまりそうもない。

また、泉田知事は新総特について、「金融機関、株主を免責した計画は不毛です。東電の経営が厳しいのは事故のせいです。免責により、モラルハザードが生じ、再稼働圧力が金融機関から生じるというのは安全文化を破壊し、本末転倒です」とも書いている。

金融機関と株主の責任追及はなし

会見で質問に答える数土氏。手前は廣瀬社長

新総特には昨年末に閣議決定された、福島事故費用への新たな国費投入が織り込まれたが、法的整理を通じた金融機関と株主の責任追及はまたも見送られた。

被災者への賠償費用はこれまで通り東電が負担するが、交付国債枠を5兆円から9兆円に増枠し、国が機構を通じて東電の費用を無利子で立て替える。一方、除染費用については実施・計画済みの費用2.5兆円程度を東電が負担するが、それ以外は国の負担だ。中間貯蔵施設の費用約1.1兆円にも税金が充てられる。

こうした国の対応について数土・次期会長は「二歩も三歩も踏み出してくれた国に敬意を表する」と語った。

一方、金融機関に対しては、借り換え等による与信維持のほか、一般担保(優先権)の付いた私募債による融資の抑制、戦略的合理化・成長戦略への2兆円規模の新規与信などが要請されている。東電のメインバンク、三井住友銀行の頭取でもある國部毅・全国銀行協会会長は16日の定例会見で、「金融機関にとって厳しい要請」と述べたが、“実質破綻状態”の東電を今後も正常債権に据え置いたまま金利収入を得られるわけで、”特別優遇“と言ってもおかしくない状況だ。

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