自動車教習所が窮地に!「免許離れ」が深刻化 「もはや少子化だけが原因ではない」

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その後、「国民皆免許時代」が到来し、18歳人口は92年をピークに減少に転じたが、教習所数は高止まりを続けた。90年代後半以降は減少傾向にあるものの、07年末で1424校を数え、供給過多は依然として深刻。「香港は700万人の人口がいるが、教習所は3校しかない。日本も700校くらいでいいのでは」(教習所関係者)。

限られたパイを奪おうと、値下げ合戦は激化している。東京・多摩地区はJR中央線沿線に教習所がひしめき合い、特に価格競争が激しい地区として知られる。AT限定の免許料金では入学費や教材費を含めて20万円台前半と、10年前より2~3割安い。各社が割引キャンペーンを喧伝し、値下げに消極的だった教習所ですら、「料金格差が3万円程度なら手厚いサービスで対抗できたが、7万~8万円も違うとこちらも下げるしかない」と、値下げに追従せざるをえない状況を認める。

若者が密集する都心部に対抗して、地方の教習所も値下げに躍起だ。地方はもともと人件費や土地代が安く、コスト競争力が高い。そのため低料金をウリに都心の教習生を呼び込む合宿プランがしのぎを削る。時期にもよるが、往復交通費や食費、宿泊費込みでAT限定20万円以下と破格の提示をする教習所もある。それでも「合宿免許はインターネットで料金比較する人が多く、下げ止まる気配がない」(合宿免許の斡旋を手掛けるエル・アンド・アイの阿部勝明社長)。

泥沼化する値下げ合戦により、各社の経営環境は厳しさを増している。人件費を抑えるため、20代前半の若い指導員を多く採用するケースも目立つ。飛鳥交通や国際自動車など大手タクシー会社系列の教習所には、すでに撤退の動きも生じている。

アイデアが出せない教習所の古い体質

相次ぐ値下げで体力の消耗戦に陥るのを防ごうと、独自の差別化策で顧客獲得を狙う教習所も出ている。

埼玉のファインモータースクールでは、ガソリン代を節約できる「エコドライブ教習」を日本で初めて導入。免許の新規取得者だけでなく所有者への講習も手掛け、「人生で一度きりの場所ではなく、リピーターとして何度も来てもらえる場所にしたい」(臼田和弘社長)と意気込む。

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