大混雑の成田空港、「顔パス搭乗」は救世主か 世界の空港で採用、NEC「顔認証」技術の実力

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ただ、一連のシステムには課題もある。NECと成田空港が実現した今回の仕組みは、搭乗手続きに欠かせない出入国審査が対象になっていない。実は日本のパスポート所持者は、すでに出入国審査で顔認証システムを利用できる。ここでは昨年夏からパナソニック製の認証ゲートが導入されている。パスポートを機械に読み込み、正面にあるカメラで顔写真を撮影・照合するというものだ。

入国審査ゲートではパナソニックに軍配

この顔認証ゲートの入札にはNECとパナソニックを含む5社が参加したが、結果的にパナソニックが受注を勝ち取った。前出の受川氏は、「パスポートのICチップに入っている写真とその場で撮影した顔写真を照合するだけなので、高い技術力は必要ない。そのうえユーザーインターフェースなどの総合的なデザインで力が及ばなかった。勉強させてもらった」と振り返る。

パナソニックが受注に成功した出入国審査の顔認証ゲート(写真は羽田空港、撮影:風間仁一郎)

当該エリアの管轄が空港ではなく、法務省入国管理局という事情もある。成田空港の濱田常務は、「将来的には出入国審査も1つのIDでできたほうが利便性は高いので、引き続き入国管理局との協議を進めたい」と語った。

濱田常務によれば、チェックインから搭乗まで大規模に顔認証システムが採用された空港は成田が世界で3例目。まず2016年10月に開業したシンガポール・チャンギ国際空港の第4ターミナルが先駆となり、その後2018年末にアメリカのアトランタ国際空港が続いた。このうちアトランタ空港にはNECのシステムが全面採用されている。

アトランタ空港で導入を主導したのが、現地最大手のデルタ航空だ。同社はアメリカ税関国境警備局と協力し、成田空港では実現できていない出入国審査でのシステム連携も可能にした。顔認証システムの導入により、フライト1便あたり9分の時間を節約できるようになったという。

デルタ航空はニューヨークやワシントンDC、ミネアポリスなど、アメリカ国内の主要空港で顔認証システムの試験導入を進める。ベンダー側であるNECも、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港の入国審査や、ブラジルの空港における税関審査で導入実績がある。混雑解消やセキュリティー強化の流れの中で、世界中で採用が広がっているのだ。

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