けったいな文化を変え100年続く会社に シャープの髙橋興三社長に聞く

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──再成長へ向けた具体的な道筋はあるのか。

社長として、具体的な新規事業を作ることはもちろん大事なことだ。ヘルスケアやロボティクスといった五つの領域がそう。マキタやデンソーといった資本提携先ともチームを作り、議論を進めている。

ただ、ここ10年間で伸びる事業を作るだけではダメ。自由な考えを引き出し、永遠とは言わないが少なくとも次の100年続くような礎を作るのが社長の仕事だ。

「シャープは液晶の一本足打法や」といわれてきた。これはそのとおりで反省しないといけない。もしここで、いきなり液晶と全部入れ替わるような事業を狙ったら、同じことになってしまう。巨大な市場は参入企業も多く、あっという間にレッドオーシャン(激しい競争市場)になる。

われわれには画像処理、メカトロニクス、ディスプレーなどの技術がある。持てる根幹技術をどれだけの製品領域に広げていけるかだ。

――電機業界で経営を再建した例として、日立製作所やフィリップスなどがある。パナソニックも車載機器や住宅事業を強化している。シャープでもそうした事業の組み替えがありうるか。

そうなっていくと思う。若い人たちの知識や発想はすごい。彼らが自由にできる環境、システムにしていく。人事評価などを変えることで、自発的にそういうものが出てくると信じている。

――年初の米家電見本市(CES)では、シャープも含め各社が4Kテレビを展示した。4Kテレビの展望は。

国によってばらつきがあるが、日本では東京オリンピックを目指し総務省は8Kテレビ(の実現)も想定しているようだ。シャープもすでにCESで8Kテレビを展示している。ただ、8Kの方向に進むにしても、放送やインフラ面での制約がまだある。

シャープは短期的には『アクオス クアトロンプロ(米国ではクアトロンプラス)』を展開していく。データ量はフルHD並だが、フィーリング的にはほとんど4Kという商品であり、どこまで伸びてくれるか期待している。

――4月の消費増税以降の国内販売はどうなると分析しているか。

一般論でいえば1~3月で10%程度上振れし、増税後は9月ごろまで反動が出る。シャープの国内事業比率は40%なので、10%増だと4%上振れする。

社内では、「4月以降に機能を多少追加したような商品を作ってもだめだ」と話している。見たこともないようなもので、お客が欲しいと思ってもらえるものをど れくらい商品化していけるか。新規事業推進本部で進めており、いきなり4月は無理としても4~6月期には出していきたい。

週刊東洋経済2014年1月18日号(1月14日発売) 「この人に聞く」に加筆)

高橋 由里 東洋経済 記者

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たかはし ゆり / Yuri Takahashi

早稲田大学政治経済学部卒業後、東洋経済新報社に入社。自動車、航空、医薬品業界などを担当しながら、主に『週刊東洋経済』編集部でさまざまなテーマの特集を作ってきた。2014年~2016年まで『週刊東洋経済』編集長。現在は出版局で書籍の編集を行っている。

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