日中関係の現状は小泉時代より厳しい 清華大学現代国際関係研究院の劉江永副院長に聞く

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そして釣魚島問題は単に領有権をめぐる問題ではなく、歴史が密接にかかわっている。尖閣は日清戦争末期に日本領にされており、その領有権問題には過去の戦争と直接の関係があるのだ。

また、新しい防衛大綱では、中国を最大の敵国だと事実上名指ししている。おそらく戦後初めてのことで、日清戦争直前のようだ。しかし、日中関係と、中国と安倍政権との関係は別々の問題で、混同してはいけない。

──政経を分離する、と。

中国は政経分離という言い方は取らない。だが、安倍首相の誤った行動をビジネスにまで影響させる必要はない。日中間の交流や人脈は、安倍首相の行為によって全面的に損なわれるものではない。是々非々で付き合い、平和を維持することが重要だ。

──米国の声明にあった「失望」という表現をどう解釈したか。

米国が日本に望んでいたのは、歴史問題を蒸し返さないことと、韓国との関係改善だ。しかし安倍首相は2つとも聞き入れなかった。バイデン副大統領の訪日、ケネディ大使着任の直後であるだけに、「失望」と言わざるを得なかったのだろう。アーミテージ元国務副長官のような日本支持派にとっても、靖国問題で日本を弁護するのは難しい。米国政府の対日認識は一段と厳しくなった。

週刊東洋経済2014年1月18日号(1月14日発売)の核心リポート01インタビューに加筆

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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