マツダ「新型MAZDA3」のデザインは何が売りか セダンとファストバック、それぞれの特徴は

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ファストバックのリアクォーターとドアハンドル(筆者撮影)

チーフデザイナーの土田康剛氏によると、この差別化は2015年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカー「RXビジョン」、2年後の東京モーターショーでお披露目された「ビジョン・クーペ」と関係があるという。

2台のコンセプトカーは、世界で高く評価されている魂動(こどう)デザインをさらに深化させるべく、日本の美意識に基づく「引き算の美学」、つまり過剰をそぎ落とし、滑らかな面が表現する繊細な光の移ろいによって豊かな生命感を表現することに力感が置かれていた。

2つのマツダ3に見る方向性の違い

土田氏はマツダ3そのものだけでなく、この2台で提案した引き算の美学をどう市販車に落とし込むかというプロジェクトにも関わった。その結果出した答えは、2台のコンセプトカーに共通する「艶」と「凛」の共有は継承しつつ、ファストバックはRXビジョンと同じように艶やかさ重視、セダンはビジョン・クーペがそうであったように凛とした部分を強調するというものだった。

たしかに2つのマツダ3のエクステリアを見比べると、方向性が違う。ファストバックはボディーサイドにキャラクターラインがなく、面で魅せる印象が強いのに対し、セダンは長い間クルマの基本形として認められてきた形であることから、水平基調を強め、前後フェンダーなどにラインを追加している。

フェンダーにキャラクターラインが入るセダン(筆者撮影)

線ではなく面で魅せる。言葉でいうのは簡単だが、作るのは大変だ。キャラクターラインがあったほうが、パネルを合わせるのが楽だからだ。そこでマツダ3では、従来はドアやフェンダーなど別々に行っていた品質管理を、一体で進めることにしたという。

それでもプロトタイプを生産現場の人たちに見せたときには驚かれたそうだが、嫌とは言われなかった。現行ロードスターのリアフェンダーの深い絞りもそうだが、マツダの生産現場の人たちには、やってやろうという意気がある。同等の形を生み出すのに、欧州のプレミアムブランドでは5回のプレスが必要なところ、マツダは3回で済んだというエピソードも聞いた。

マツダは魂動デザインの導入に際し、欧米の自動車メーカーではデザイナーと差をつけていた生産現場の待遇を、同等レベルにまで引き上げたという証言もある。これもやる気の源泉になっているのだろう。さらに筆者は広報スタッフから「いちばん生産現場に通ったデザイナー」と土田氏を紹介されており、デザイナーがこの形の実現に並々ならぬ熱意を抱いていたことがわかる。

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