「脱百貨店路線」で新たな顧客層を獲得 好本達也・大丸松坂屋百貨店社長に聞く

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――脱百貨店路線とも呼ばれる「新百貨店モデル」が奏功しているのでしょうか。

リーマンショックで痛手を受けて、新たなモデルづくりに着手した。当時は大丸と松坂屋の合併や、大阪・梅田店と東京店の増床を控えており、これをどう乗り切るか、真剣に考えた。

新たな顧客層獲得のため新たな取引先を開拓

増床分でどう展開するか。従来の売り場づくりでは市場の変化に対応できない。何らかの形で中間層をもっと取り込む必要があった。当時、社内で言われたのが「オープン化」。それは、お客様を広げるには、カテゴリー(ショップやテナント)やリソース(取引先)の間口をも広げる、ということ。たとえば、婦人服ならオンワード、三陽商会、ワールド、サンエー、東京スタイル、イトキンなど、従来の取引先からの仕入れ比率が、20年間ほとんど変わってこなかった。そこで(自主企画品の)「うふふガールズ」の売り場を作った。これはほとんど新しい取引先からの仕入れ。「うふふ」をきっかけに取引先を新たに開拓した。

「新百貨店モデル」が生まれる大きな契機は(そごう・西武から買収した)大阪・心斎橋店の北館を作ったこと。暗中模索で、ユナイテッドアローズやプラザを入れ、若年層や30歳前後の中間層を取り込むことができた。この手法を梅田店や東京店の増床に導入した。

一方で、こうした低価格ショップの展開により、新たな顧客層やマーケットの開拓が可能になるが、粗利率が下がっていくことも避けられない。それでローコスト化へのアクセルを踏んだ。たとえば、梅田店、東京店とも催事場を減らしてきた。梅田は13階に大きな催事場があり、年100億円程度を販売していたが、一方で、もの凄い経費と人員をかけてきた。しかも物産展や紳士服の2着セールに来たお客様が、婦人服や紳士靴を買っていくかといえば、そうではない。

ポケモンセンターや東急ハンズなどに来るお客様は、その時には買い回りにはつながらないが、将来的にはつながる可能性がある。そうしたもので来店を促す方がよいと考えた。お客様を呼ぶための人や資金の使い方は全体的に大きく見直してきた。

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