社会保障改革提言で小泉進次郎氏を採点する 「100点満点」で結局「何点」をつけられるか?

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この際に大きな問題になるのが在職老齢年金制度(働いて収入があると老齢年金を削る働く意欲を阻害する制度)の問題がある。

提言では、「就労インセンティブを阻害する在職老齢年金の縮小・廃止の検討を通じ公的年金制度の見直しに取り組む」とあるのだが、ここは「縮小・廃止」と、廃止と一緒に「縮小」を書いてはいけない。制度上の面倒をできるだけ残しておきたい年金官僚や年金関連業界が、縮小でお茶を濁そうとする可能性がある。このテーマはコイズミ君の立場で議論すると必ず勝てる問題なので、ここは「速やかな廃止」と書くのが満点であり、「縮小」を併記したことは大きな減点材料だ。

定年廃止は解雇の金銭解決とセットのはず

年金等の社会保障制度と働き方は当然関連性を持っている。提言が、雇用制度改革に触れていることは適切だ。加点対象になる。エイジフリーの考え方からして、「将来的な定年制度の禁止の是非も検討すべきである」という方向性はいいのだが、2つ問題がある。

そもそも戦略本部は物事の是非の検討が役割なのだから、例えば「年齢による差別とも言うべき定年制は近い将来に禁止が妥当である」というくらいに強く結論を書き込むべきだった。「検討の結果、結論するべきだ」という結論はツマラナイ。詳細は後で検討してもいいが、結論は臆せず述べよ。

もう1点、定年の廃止は、正社員の解雇の金銭解決とセットで導入すべき政策だ。議論を呼びやすい正社員解雇の条件について言及を避けたのは、提言として意気地がない。ここは検討不十分で記述が浅いことを理由に減点するところだろう。

コイズミ君のお父さんは、詳細を官僚の検討に任せたのが少々失敗だったが、早い時点から「郵政は民営化」といって敵を作ることを怖れない結論を言い続けた。当時のお父さんの度胸をまねてほしいものだ。

もっとも、現在のコイズミ君は、総裁選のいささか奇矯な泡沫候補だった頃の若き日のお父さんと違って、次の次くらいには自然に総裁が転がり込んできそうな「失う物のあるポジション」だから、慎重になるのも無理はない。減点は小幅にとどめるので、気を取り直して頑張ってほしい。

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