デジタル投資に沈む地方テレビ局--景気失速も追い打ち、北海道5局体制の黄昏

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国内景気失速の荒波は、地方経済にも容赦なく襲いかかった。かつては「地元の名士」とも位置づけられていた地方局の経営基盤も揺らいでいる。2007年度は、民放連加盟127社のうち30社が赤字になっているが、そのほとんどが地方系列局。特に05年度から本格化した地上デジタル化投資に伴う減価償却負担増などにより、06年度、07年度は2期連続で50%に迫る減益率を記録した(下グラフ参照)。

特に大きなダメージを受けているのが、突出したデジタル化投資負担にあえぐ北海道の民放各局。日本の国土全体の5分の1の面積を有する北海道では、2011年7月のデジタル完全移行に備えた地元各局の投資額が他地域に比べて突出している。当初想定していた全世帯カバーに必要な投資額は、中継車やカメラなど制作設備導入の費用も加えると1局当たり130億円前後にも上り、ローカル局平均の54億円を大きく上回っていた。年商規模は最大手の札幌テレビ放送(日本テレビ系列)でも200億円に満たないため、かなり重たい負担だ。

北海道は広大な土地に民家が点在しており、投資効率も極めて悪い。たとえばTBS系列の老舗、北海道放送(HBC)が新たに立ち上げる164の中継局のうち、62局が全道の96・5%をカバーするのに対し、残りの102局のカバー率はたったの1・4%だ。

そこで、山間部などへ建設する後者の102局を「支援要望局」と位置づけ。北海道ではアナログ放送の普及期に、過疎地の地元自治体が受益者負担の考え方のもと、放送局に代わって中継基地を建設したことを踏まえ、デジタル化投資でも民放各局は“北海道特例”を求めた。その結果、支援要望局については、一定割合を国や自治体が資金負担することで決着した。

残る「自前建設」の局のほとんどはNHK、民放各社が手を携えて共同建設を行う。札幌と他の基幹中継局を結ぶ電送も、北海道電力系のホットネットのサービスを利用することで投資抑制を図った。

ライバル局同士の連携もあり、当初想定の1局当たり投資額130億円は、「90億円程度になりそうだ」(HBCの溝口博史取締役編成制作局長)。しかし、これでも新規設備建設に伴う減価償却費がズシリと響く。前08年3月期にはテレビ朝日系列の北海道テレビ(HTB)を除く各局とも営業損失を計上。純利益も5社中2社が赤字となった。

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