迷走「ゾゾ」の打開策にそれでも不安が募る理由 昨年開始の会員サービスは半年足らずで終了

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同事業では、出店ブランドと共同で20~50程度のサイズを展開する商品を作り、ゾゾタウン上で販売する。ビームスやリーバイス、アーバン・リサーチなど複数のブランドの参画が決定しているという。前期のPB事業などの大幅な計画未達を教訓に、MSP事業の今期商品取扱高の計画は10億円と控えめに設定。さらに今期は、かつて失敗したゾゾタウン事業の中国進出に再挑戦する意向も明らかにした。

いずれの新事業も、前期に大赤字を計上したPBほどの投資はないとはいえ、矢継ぎ早に施策を打ち出しては方向転換する会社の姿勢に不安がくすぶる。ゾゾタウン事業ではARIGATOサービスだけでなく、顧客の好みに合わせたコーディネートを定期配送する「おまかせ定期便」もわずか1年で終了することが決まった。

ゾゾタウンは出店ブランドが約7000、年間購入者数が800万人を超す巨大サイトに成長した半面、度重なる方向転換が出店ブランドや顧客にどのように映るのか気になるところだ。

疑問視される「見通しの甘さ」

ARIGATOにせよPBにせよ、疑問視されているのは事前の見通しの甘さだ。今回の決算説明会では、証券アナリストから新規施策の決定プロセスの妥当性を指摘される場面もあった。ゾゾの澤田宏太郎取締役は「新しいサービスの事業化が決まったときには、現場を含めて綿密なシミュレーションを行っている。前澤が1人で決めて1人でやっているわけでは決してない」と強調した。

本業に集中するとして休止していたツイッターを4月25日に、2カ月半ぶりに再開した前澤社長は「皆様からの信頼を取り戻せるよう今期も集中して頑張ります」と宣言した。

会社側は今2020年3月期業績について、ゾゾスーツの配布費用やPBの評価損が減ると見たうえで、売上高1360億円(前期比14.9%増)、営業利益320億円(同24.7%増)の利益回復を見込む。

ただ、今回の施策でブランドの離脱は一部にとどまっても、アパレル各社が自社サイトでの集客に注力する中、ゾゾタウン事業だけでこれまでのような高成長を維持することは容易ではない。PBは事業縮小し、第2の収益柱の構築に向けた先行きも視界不良が続く。もくろみどおりの挽回を図れるのか、今期はまさに真価が問われることになる。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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