"和製LCC"ピーチが成功したこれだけの理由 井上CEOが語る、格安航空の必要条件

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チェックインカウンターは「シンプル・イズ・ベスト」の発想(写真は関空第2ターミナル)

――数分の遅れでも待たずに出発する。

最初はお客様ともめました。「2分ぐらい待てないのか」とか。チケットもスターバックスのレシートのようで、チェックインの仕組みも簡素すぎて、戸惑う人もいたんですね。

でも、関西の人には想定以上に早く受け入れられました。航空サービスだと思っているとやけに冷たいが、関西の人は「だから安いのか」と合理的に理解してくれています。

減免措置は恒久化してほしい

――当初、関空を拠点に定めたとき、専門家などからは批判的な意見が多かったそうですね。

大多数が「その意志決定は間違いだ。今に失敗する」とおっしゃった。関西経済が衰退している点などを懸念されたようです。

一方、私たちは関空を拠点にしてもうまくいくだろうと想定していました。関西圏は約2000万の人口を抱え、韓国に匹敵するほどの経済規模がある。京都や奈良など、外国人が日本で訪れてみたい人気スポットが7カ所もあり、首都圏の空港に比べてアジアへのアクセスが約1時間早く、24時間体制で離発着できる。

それに加えて、LCC専用のターミナル(第2ターミナル)が関空に設置されたのが大きいです。海外の事例がそうですが、支えるインフラがないとLCCはうまくいかない。私たちはそれを自分で調べましたが、専門家は知らなかった。口幅ったいですが、関空が第2ターミナルを設置するにあたっては、私たちがいろんな情報を提供しました。

――第2ターミナルは関空の中心地から、シャトルバスで5分ほど離れた場所にあります。

そこをピーチの搭乗者が利用していることで、関空の人の流れが変わりました。閑古鳥が鳴いていたような場所にコンビニやファストフードが新たに出店したり、関空にアクセスする電車やバス、フェリーなどの公共交通機関が早朝、深夜枠を増やしたりということにつながっている。たとえば、大阪・梅田から関空へ向かう深夜バスは朝3時の便が満席になっています。

つまり、ピーチは関空に経済効果を生んでいます。関空からは着陸料の減免措置を期間限定で暫定的に受けていますが、もし、着陸料が上がれば運賃に影響する可能性もあります。また、ピーチは燃油サーチャージ(燃料価格に追随して運賃とは別にかかる料金)も搭乗者からいただいておらず、コストは極限まで切り詰めてやっている。ピーチが関空にもたらしている新たな経済効果を考えれば、減免措置を恒久化してもらいたいというのが希望です。

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