現状認識欠如の「裸の王様」が舵を握る泥船・自民党

現状認識欠如の「裸の王様」が舵を握る泥船・自民党

塩田潮

 2009年度税制改正関連法案の付則に消費増税を盛り込むかどうかの自民党内の争いが1月22日、ひとまず落着した。麻生首相が「3年後」、つまり2011年度の増税実施の明記に固執し、中川秀直元幹事長や若手・中堅が反対するという図式だったが、「政局化」回避のために双方の顔を立てた玉虫色の曖昧決着となった。

それにしても、麻生首相はなぜ3年先の問題にこだわるのか。定額給付金、集団的自衛権、道路特定財源の一般財源化、日本郵政株の売却、「医師の社会的常識」発言などで前言訂正が相次ぎ、発言にぶれが目立っている。その中で消費増税問題は数少ない「ぶれないテーマ」、いわば最後の砦だった。そんな事情もあったが、麻生首相は妙に「3年」を意識している面がある。

 就任直後、景気悪化の日本経済を「全治3年」と言った。1973年秋の第1次石油危機の際、狂乱物価退治に乗り出して成功した福田赳夫蔵相(後に首相)が当時、口にした「日本経済は全治3ヵ年」という言葉からの借用だろう。麻生首相の場合、福田元首相と違って、言いっ放しに終わる危険性が大きいが、「3年後」の消費増税、「全治3年」の経済と「3年」を強調するのは、3年間の政権担当を視野に入れているからだろう。

 実際は支持率低迷で明日をも知れぬ崖っ縁だが、ネアカで楽観的で強気の麻生首相は、「短期政権必至」という多くの指摘とは裏腹に、もしかすると向こう3年の政権維持は可能と思い込んでいるのではないか。
 「支持率低迷は小泉政権以来の負の遺産のせい。与党の造反派にパワーなし。政局は麻生ペース。公明党は離反不能。自民党には底力あり。次期総選挙も辛勝」と勝手に判断しているふしがある。だが、現在の無力政治はトップリーダーの現状認識力の欠如が最大の要因である。自民党は「裸の王様」が舵を握る泥船に乗り続けるのだろうか。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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