「65歳以上のシニア」を活用できない会社は傾く 不安なく一生働ける環境をどう整えるか

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宮島:「甲子園のビール売り上げNo.1」という女子学生もいました。どうしてNo.1になれたのかを聞いたら、「仕事が始まる30分前に来て、おじさんたちと一緒に六甲おろしを歌う」と。歌い終わった後に「ここでアルバイトしています」と言うと、必ず「じゃあ、俺たちが買ってやる」となるんですって(笑)。

彼女たちよりも「話がうまい」人はたくさんいます。ただ、ほとんど印象に残らない。特別に面白いことでなくてもいいんです、アルバイトにしても何にしても、「実際に体験したことをしっかりと話せる人」がいいですね。

中原:最後に、ファンケルで働く人材に、他の会社の人材とは異なる特徴がありましたらお伺いしたいです。

宮島:池森が創業した当時(1980年)から、この会社は女性に助けられてきました。創業して10年経っても、従業員の男女比率は1対9くらいでした。現在は本社では3対7、店舗も含めると1対9くらいです。いま「女性活躍」が推進されていますが、ファンケルはもともと女性が活躍していた会社です。

制度を利用する人がいれば、陰で支える人もいる

宮島:池森がよく話す創業当時のエピソードがあります。パート勤務の女性が夕方の5時にいったん帰宅し、夕飯を用意してから会社に戻って働いていたと。しかし、ご主人は不満で「なぜそこまでやるんだ」と聞いたら、彼女は「お客さんが待っているからよ」と、そう言って返した。池森は「そこまでお客様のことを考える女性がうちで働いてくれている」と、とても喜んでいたんですね。

そういった女性のパワーでファンケルはここまで伸びてきました。現在では管理職の女性比率は46%を占めています。無理に女性を管理職に登用したわけではなく、会社に女性が活躍する素地があったので、管理職も自然と増えたのです。産休からの職場復帰率は100%に達していますし、復帰後は育児をしながら働けるように時短制度も他社に先がけて導入しています。

ただ、池森は、制度を利用する従業員に対し、制度があって当たり前だとは思ってほしくない、と言っています。

自分が産休に入れば、その担当業務を別の誰かがカバーしなくてはいけません。そのことについて感謝をしてほしいし、ほかの人が産休に入ったときは協力してほしいと、いつも言っています。そんなふうに、もともとの素地の上にいろいろな制度を導入するだけでなく、それを従業員が納得して使えるように経営から働きかけているところも、他社とは違う特徴かもしれませんね。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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