鴻海の郭氏、「台湾総統選」出馬が起こす大波紋 鴻海出資のシャープの経営はどうなるのか

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国民党の予備選に参加し、総統選に打って出ると表明した鴻海精密工業の郭氏(写真:Bloomberg)

台湾の鴻海精密工業を率いる郭台銘董事長が4月17日、台湾総統(大統領)選に出馬すると発表した。まずは台湾の野党、中国国民党(国民党)の予備選に参加し、同党の総統候補に指名されることを目指す。

郭氏は17日の午後、台北市にある国民党本部で、長年の同党に対する貢献をたたえて郭氏に栄誉賞を贈るための式典に出席。そのあいさつで「国民党の予備選に出る」と表明した。「選ばれたら、国民党の候補として2020年1月の総統選に出る。選ばれなかったら国民党が選出した候補を全力で応援する」と語った。国民党は7月に総統選の公認候補を決定したいとしている。

期待されるのは台湾経済問題の解決

郭氏は2016年にも国民党から総統選へ出馬することが取り沙汰された。しかし、総統になるためには立候補に際して中央選挙委員会に財産を申告し、総統に就任すれば、保有するとされる85億米ドルの財産を信託しなければならない。総統退任後も国家機密保持のために一定期間はアメリカや中国などに自由に出国できない。一代で築き上げた鴻海の経営にもこれまで通り関われなくなる。郭氏にとって総統選出馬へのハードルは低くなかった。

実際、台湾の財界からは「思い切った決断をしたな」と驚きの声があがる。しかし、郭氏は今年1月に公式フェイスブックを開設。3月には公式LINEアカウントを作るなど、対外発信を積極化させ、「2020年の総統選へ意欲を示したか」(現地の政治記者)とみられていた。4月16日には郭氏は「この2日で総統選への出馬を決定する」とメディアに対して発言し、注目が一気に集まっていた。

郭氏に期待されているのは台湾が抱える経済問題の解決だ。台湾では所得格差や賃金が伸び悩んでいることなどが社会的問題となっている。問題解決の突破口となり得るのが中国との経済交流だ。親中国路線を訴える国民党は馬英九・前総統(2008年~2016年)のもとで中国との経済関係を強化していた。

しかし、台湾国内で中台統一を目指す中国への警戒感は根強い。経済を優先するか、それとも台湾の主体性を堅持するかをめぐり、中国との距離感が焦点となり続けている。2016年からは台湾独立志向の民主進歩党(民進党)が政権に就き、中国との関係が悪化。経済回復を実感できない台湾住民からは中国との関係改善を求める声は少なくない。

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