当面「ドル高円安」が進む可能性が高まった? 「円売り圧力」の「構造的な変化」が起きている
円に売り圧力がかかりやすくなっているのは、世界経済のリスクとされる様々な問題が下火になり始めたことも一因だ。米国主導の国際通貨基金(IMF)ですら懸念を隠さない米中貿易摩擦には両国の歩み寄りが見え始め、日本の機関投資家が運用難の環境下で頼みの綱としてきた欧州で目立っていた景気の減速懸念にも、 欧州中央銀行(ECB)は利上げの先送りで景気を下支えする姿勢を明確にした。
さらに英のEU離脱期限は、10月まで先送りとなり、無秩序離脱が世界経済を混乱に落とし入れるリスクは当面後退。中国ではこの日発表の第1・四半期国内総生産(GDP)が予想を上回る前年比6.4%増となり、少なくとも経済指標の改善は続いている。景気減速の前触れとされる米長短金利の逆転も、今月に入り発生していない。
楽観論の復権は早くも市場のあちこちに表れている。47カ国の指数で構成するMSCI世界株価指数<.MIWD00000PUS>は昨年末からV字回復で、昨年10月以来の高値を奪回。新興国通貨指数<.MIEM00000CUS>も昨年6月以来の高値圏となる年初来高値に接近してきた。
リスクオンムードが市場に広がれば、円は売られやすくなる。実際、市場心理の明暗を反映しやすいとされる豪ドル/円<AUDJPY=R>は昨年12月以来、幾度も阻まれてきた80円の上限をようやく突破。この日も続伸し、4カ月ぶり高値を更新した。
経常黒字でも毎月1兆円超の「円売り圧力」
日本企業による相次ぐ海外企業の買収で、日本の国際収支に構造的な変化が起こっている点も見逃せない。日本は世界でも代表的な経常黒字国であるものの、それに関連して実際に発生する円相場の売買は毎月1兆3000億円程度、円売りが円買いを上回っている可能性があるとの試算が出てきた。
経常黒字の中には、外貨準備から発生する利子など所得収支黒字として計上されるが、実際は外貨のまま保有されるものも多い。
シティグループ証券・チーフFXストラテジスト、高島修氏は、そうした未実現の円買いや海外企業買収に関連した円売りなど、いくつかの項目ごとに仮定を置いて推計。「経常収支と直接投資収支を合計した基礎収支に、非常に大きな構造変化が起こっており、日本にお金が戻りづらくなってきた。円売り超の需給環境は、最近円高が進みにくくなったひとつの背景だ」と説明している。
(基太村真司 編集:田巻一彦)
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