銀座ルノアールが挑む「脱おじさん化」への道 完全分煙化や積極的な改装で顧客層広げる

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昨年9月にリニューアルオープンしたCafeルノアール目黒東口駅前店(写真:銀座ルノアール)

象徴的なのは、2018年9月にリニューアルオープンしたCafeルノアール目黒東口駅前店の動きだ。メニュー開発に女性社員の意見を積極的に取り入れ、クリーミーな泡が乗ったアイスコーヒーやクリームが多く乗った飲み物、フルーツ入りの飲み物などを拡充。喫茶室ルノアールと異なる品ぞろえにした。内装もカラフルないすを配置し、女性客を意識している。その結果、以前よりも30代以下の若年層や女性、カップル、家族の利用が増えたという。

「業態ごとに想定する主要顧客層を分け、グループ全体で今までとは異なる層を掘り起こしていきたい。そうすれば客層が違うグループの複数ブランドで、ドミナントで出店できる可能性もある」。銀座ルノワールの岡崎裕成・取締役営業本部長は、新業態強化の理由についてこのように語る。

客層を広げるだけではなく、地方の大都市への進出ももくろむ。銀座ルノアールが得意とする都心の駅前は商圏が小さく、競合との顧客争奪戦が激しさを増している。現在、銀座ルノアールが首都圏以外で出店しているのは、熊本県のフランチャイズ1店舗のみ。

首都圏立地が今後も柱であることは変わらないものの、地方大都市への進行に向け、現在調査を行っているところだ。「たとえば都心だけでなく、地方でも喫茶店をモーニングで利用する人が増えている。都心と地方で今後の成長性はあまり変わらないだろう。地方の中でもより需要拡大が見込める大都市で、喫茶室ルノアールの認知度を高めていきたい」と、岡崎営業本部長は意気込む。

ライバルの台頭で競争激化

女性層など新しい顧客を獲得したとはいえ、銀座ルノアールは安閑とはしていられない。日本では、1人あたりのコーヒー消費量は少しずつ増えている。全日本コーヒー協会によると、1週間における消費量は2002年に10.03杯だったが2016年には11.09杯にまで伸びた。

一方で、コンビニエンスストアやファストフード業態など他業種もコーヒーの販売を積極化。銀座ルノアールがライバルと位置付ける星乃珈琲店や名古屋発のカフェチェーン、コメダ珈琲店も全国で出店を加速させている。「ここまで市場競争が激しくなるとは想定していなかった」(岡崎営業本部長)。

銀座ルノアールはグループ全体の既存店売上高を見ると、収益柱である喫茶室ルノアール以外は、ほとんどの業態が前年実績を超えることができていない。新業態でも新顧客を増やすことができるか。また、喫茶室ルノアールの女性客をリピート客として囲い込み続けることができるか。真価が問われるのはこれからだ。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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