『せっかくのキャリアが、ローテーションで台無しに・・・』(38歳男性) 城繁幸の非エリートキャリア相談

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<城繁幸氏の診断>

診断:『金太郎飴の光と影』

 一昔前に一般的だったジョブローテーション制度の名残でしょう。いくつもの部門を経験させることで、幅広い対応力を身につけさせる人材マネジメントです。

 と書くと格好良く聞こえますが、要するに便利で潰しの利く金太郎飴を作るようなものですね。

 年功序列制度下では、年齢に応じて序列が決まるわけですから、個人の資質や能力といった要件は、あまり重要ではありません。たとえば「今年で勤続20年だから、君は来月から部長だよ。今後はマーケティングを担当してもらうから、なにか本でも読んどいて」という具合です。こうなると、専門性よりも柔軟性の方が重要となるわけです。

 ただ、既に多くの企業において、この制度は実情にマッチしなくなっています。該当するビジネスについて、一定の経験と能力を持つ人間にマネジメントを任せないと、時代の変化には対応できないんですね。

 従業員の側から見ても、これはたまったものではありません。ゼネラリストなんて、社内では通用しても、転職市場での価値なんて限りなくゼロに近いですから

 金太郎飴ではなく、色々な種類のお菓子の詰め合わせを作れるシステムこそ、労使双方から求められているのです。

 既に大企業では、その分野におけるスペシャリストがマネージャーに昇格するのが主流です。営業なら営業の、生産管理なら生産管理の名プレイヤーという具合です。

 ゆくゆくは、マネージャーとプレイヤーのキャリアパスも別れることでしょう。マネージャーは、マネジメントの素養と熱意のある人間に年功関係なく一任し、プレイヤーを希望する人間には、プレイヤーのまま報いられるシステムのことです。管理職=偉いという価値観から、各々が各々の役割を果たすという意識への転換ですね。

 これこそが職務給なのです。私は職務給の導入をもって、日本の人事制度改革は一段落すると考えています。

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