ますます難しくなる安倍政権の財政運営 2014年度予算案 国債費の膨張に歯止めかからず

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意図したような成長率が実現できなかった場合でも、安倍政権の財政運営は高い経済成長率を前提としているだけに、財政悪化への不安感が高まり、金利への上昇圧力となる可能性がある。

要は、どちらに転んでも今後は、積み上がった借金を前に、国債費をどうコントロールするかが、極めて悩ましい問題になってくるということだ。

金利上昇に直面するリスクも高まっている

もちろん、大幅な金利上昇となれば致命傷である。政府も、あらゆる政策を総動員して金利を抑え込もうとするだろう。だが、累積した国の借金はあまりに大きい。少しの金利上昇ですら、財政運営には無視できないインパクトをもたらすだろう。

一方で、歳出削減の余地はといえば、公共事業予算はこれまでに行った圧縮の悪影響が目立ちはじめ、減災・防災や国土強靱化の必要性が叫ばれるに至っている。オリンピックに向けたインフラ整備もあり、当面は増加傾向だろう。防衛予算も、北朝鮮の政情不安や尖閣問題などから膨張方向への圧力がかかる。社会保障費は、爆発的なスピードで高齢化が進むため、増加幅を抑制するだけで精一杯だろう。つまり、歳出カットは重要な課題とはいえ、そこにはおのずと限界がある。

毎年度の借金依存度を継続的に低下させるには、同時にかなりの規模で税収の拡大も進めなければならない。2015年10月に予定されている10%への消費税率の引き上げどころか、その先の増税を実現しないことには、立ち行かないのが現実だ。安倍首相はこれまで増税議論の矢面に立つことを避け続けてきたが、そろそろ逃げ回るわけにも行かなくなるだろう。

政権発足から1年。アベノミクスの3本の矢が放たれた当初から指摘されてきた金利上昇のリスクを前に、安倍政権の財政運営はいよいよ正念場を迎える。

 

長谷川 高宏 東洋経済 記者
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