リクルートは、ネット企業に勝てるのか?

リクルートの若き経営室室長と語る(下)

 本連載では、『武器としての決断思考』『僕は君たちに武器を配りたい』『君に友だちはいらない』 の著者で、エンジェル投資家の瀧本哲史・京都大学客員教授が、各界で新たなロールモデルとなる注目の若手と対談、これからのビジネスパーソンと日本企業の生き方を探ります。第2回目は、リクルートで37歳にして、経営企画室室長、人事統括室室長を兼任する今村健一氏をゲストに迎えます。ホールディングス化、グローバル化で大きく変わるリクルートの、今と未来について聞きました。

※前編はこちら:リクルート、37歳の司令塔が描く「新戦略」

リクルート的なもの vs. グーグル的なもの

瀧本:今村さん個人としては、リクルートのビジネスの中で、どこにいちばん関心が高いですか。

今村:そうですね。やっぱり「ゼクシィ」にせよ、「スーモ」にせよ、「じゃらん」にせよ、「ホットペッパー」にせよ、日本で培ったビジネスモデルが海外でも通用するかということに関心がありますね。

たとえば旅行という領域なら、グローバルレベルのプレーヤーには「エクスペディア」や「トリップアドバイザー」がいる。たとえばの話ですが、仮にそういうところとリクルートが組んだら、何かバリューを生み出せるのかどうか興味があります。

瀧本:逆に彼らは日本に来て苦戦して帰っていったでしょう。

今村:Indeed(インディード)社を買収してわかったことはけっこうあります。一度、インディードのホームページを見ていただきたいのですが、もう本当に素っ気ないシンプルな見た目なんですね。でも日本のユーザーはすごくリッチな編集記事がついていたり、動線の設計がマニアックだったりすることに慣れている。それはリクルートがいたからかもしれませんが(笑)。

瀧本:この手の情報媒介的なビジネスで、グーグルはシンプルにシンプルにという世界をつくって、ヤフーはそれで死んだわけですけど、リクルートはより媒介価値を高める方向に行った。そういう面でいうと、ユーザーはグーグル的なものを選ぶのか、リクルート的なものを選ぶのか。そういう究極の戦いみたいなものが、あらゆる分野で起こるのかな。

今村:個人的には、どちらかが勝つということではなく、両方の「いいとこ取り」のサービスをつくったプレーヤーが勝つだろうと思います。われわれはメディアとして生業を立てていたので、悪くないポジションにいると思います。今までのリクルートを全部否定するのではなく、いいところを残しながら、シンプルなよさをいかに融合していくかがいちばんの経営テーマですね。

リクルートのビッグデータは世界一

瀧本:今後のリクルートの脅威として考えられるのが、ソーシャルメディアなどでユーザーが書くレビューのほうが、リクルートの編集記事に勝ってしまうことだと思います。経営層もこれは脅威としてとらえているのでしょうか。

今村:SNSなどで注目を集めるプレーヤーはたくさんいると思います。そのポジションをリクルートが取りに行くことももちろんできると思いますが、一方でそれが得意な人がいるなら、その人と組めばいいという考え方もあると思っているんですね。

僕たちは最後にトランザクションを取ればいい。そのためにはいかにうまく外の人と組むかを、経営層も意識し始めています。だからそういうSNSのレビューは脅威でもあるし機会でもある。昔のリクルートなら体質的に、ライバルになりそうなプレーヤーが来ると、必ず「競合対策をするぞー!」といきり立ったものですが、今は一概にあまりそういうふうにはならない。

瀧本:数としてのメディアがありふれてコモディティ化したことによって、逆にリクルートの本当の強みはどこなのか、再定義が行われたということですか。

今村:おっしゃるとおりです。

瀧本:ということはリクルートのDNAそのものはあまり変わっていなくて、ネットが出てきた、媒体が増えてきた、ユーザーの関心が分散した、という環境の変化の中で、リクルートの強みがはっきりしてきた。今はそれに合わせて新規事業を作っているし、そのノウハウは海外に持っていっても価値があるということですね。

今村:そのとおりです。それからリクルートにはすごい強みがあって、それは日本一、もしくはひょっとしたら世界一のビッグデータを有する会社かもしれないということです。

瀧本:ああ、間違いなくそうだと思います。

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