一部業務停止命令でみずほ銀は変われるか ガバナンス、経営管理態勢に重大な問題

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これでみずほは本当に再生できるのか。

いま、みずほで進んでいることは、「佐藤社長への権力集中」だ。佐藤社長自身、「2011年7月に私がみずほフィナンシャルグループのグループCEOになった時点で、みずほはワントップ体制になっている。その前までは、持株会社の社長と、みずほ銀行の頭取と、みずほコーポレート銀行の頭取の3人体制で全体を引っ張っていた。しかし、2011年3月のシステム障害を受けて、グループCEOを初めて作り、それに私が就任して以降、すべてのグループの経営責任は私に集まった」と語っている。

そして今回の委員会設置会社への移行。社外取締役を取締役会の議長とするが、銀行という特殊な経営体を監督することは容易ではなく、実質的に佐藤社長が仕切っていく場面が増えるのではないか。今回の金融庁命令により、みずほFG塚本隆史会長(前社長)の辞任という追加処分も行っている。

佐藤社長は報酬カットのみ

こうした権力集中は、みずほ再生につながるのか。佐藤社長は、金融庁からみずほ銀行の取締役会が機能していなかったという指摘を受けた点について、「私がみずほ銀行の取締役になったのは2011年の6月。非常勤取締役として入った。実際にみずほ銀行の頭取になったのは、今年の7月」と語り、「私もみずほ銀行の取締役会に出ていて、責任は非常に重いと思っている」(佐藤社長)というものの、今回の金融庁処分で佐藤社長がとった責任は、報酬の6カ月カットを12カ月カットに伸ばしただけだ。

ガバナンスの強化が今後の最重要課題であると認識するなら、みずほ銀行の頭取職を離れ、みずほFGの社長に専念するという選択肢も考えられるはず。しかし、「今年7月にワンバンクになったところ。今の段階では、銀行を一つにしていくことのエネルギーは、グループCEOの求心力によって担保されている面がしばらく続くと認識している」(佐藤社長)として、社長・頭取の兼務を継続する。

本当に求心力を高めてみずほを再生できるのか。その可否は、ひとえに佐藤社長の手腕にかかっている。

福田 淳 東洋経済 記者

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ふくだ じゅん / Jun Fukuda

『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などを経て編集局記者。

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