マツダ構造改革に”円安”の追い風 世界市場の販売拡大が課題

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12月26日、アベノミクスによる円安効果に潤う自動車業界で、マツダの急回復が群を抜いている。写真は2010年4月、都内で撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 26日 ロイター] -アベノミクスによる円安効果に潤う自動車業界で、マツダ<7261.T>の急回復が群を抜いている。同社の株価は今年、国内乗用車メーカーでトップの上昇率を見せた。円安に加え、これまで進めてきた社内の構造改革が収益体質を徐々に改善してきたという背景もある。

しかし、世界的に激しい販売競争が続く中、マツダが上向き始めた企業力を中長期的な強さに結びつけるには、他社との提携を拡大するなど大胆な経営戦略も必要との見方もある。

「モノ造り革新」。同社は06年から、こう名づけた全社的な業務改革を展開してきた。将来投入する車種をまとめて企画し、複数の車種で部品や生産設備を共用化できるようにするなど、開発・生産工程を効率化した結果、製造コストが低減。1台当たりの利益率は目に見えて改善した。12年2月に投入したスポーツ多目的車(SUV)「CX─5」は、為替が1ドル80円を切る円高水準でも利益が出るクルマに仕上がった。

今春からの円安も追い風となり、マツダの2014年3月期の連結営業利益は前年比3.0倍の1600億円と大幅に回復し、08年3月期の過去最高益1621億円に迫る見通しだ。昨年12月28日に174円だった株価(終値ベース)は、26日時点で532円と205.7%上昇。同じく業績好調な富士重工業<7270.T>(176.2%上昇)を上回るパフォーマンスとなっている。

販売面では「CX─5」以降に投入した新モデルも好調。11月に国内に投入した新型「アクセラ」の受注は約1万6000台となり、発売から約1カ月で月販目標3000台の5カ月分を超えた。マツダは16年3月まで新たに5車種を投入する計画で、販売拡大に向け商品ラインナップも強化する。

アドバンストリサーチジャパンのマネージング・ディレクター、遠藤功治氏は「新たな環境技術のスカイアクティブが市場で認知され始めており、値引きの幅も縮小傾向にある」と指摘。為替が円安で安定する中、業績好調は「来期も継続する」とみる。

内燃機関に活路

小飼雅道社長は「マツダとして一体感が出ている」と指摘。小回りが利く今の状況が最も真価を発揮できる、と自信を見せる。販売競争が激化する中、顧客との深いつながりをもつ「プレミアムなブランド」に脱皮できれば、十分単独で生き残っていけるとの算段だ。

同社のブランドイメージ向上に貢献しているのは、新たに開発した独自の環境技術である「スカイアクティブ」。ガソリン車とディーゼル車のエンジン、トランスミッション、車体など徹底的に見直し、燃費性能の大幅アップを可能にした。

米環境保護庁が今月公表した最新レポートで、米国で最も燃費が優れた自動車メーカーはマツダであると報告したのも、スカイアクティブを搭載した車が大きく貢献している。米国で販売された2012年モデルの燃費の平均をメーカー別にランキングした結果、ホンダ<7267.T>、トヨタ自動車<7203.T>、独フォルクスワーゲンなどを押さえて首位となった。

北米マツダのジム・オサリバン社長は、ほかのメーカーがハイブリッドや電気自動車などに注目する中、ベース技術である内燃機関を鍛えてきたことが、米国での高い評価を生んだと分析。各セグメントにおいてトップクラスの燃費性能を持つ車を手頃な価格で提供している、と胸を張る。

現在、マツダはガソリンエンジンの次のアプローチとして、新たな燃焼手法のHCCI(予混合圧縮自己着火)燃焼を目指している。成功すれば、ハイブリッド並みの燃費性能をエンジンで実現できるようになる。「もし内燃機関でナンバーワンの会社になれたら、それは強みや存在感になる」。パワートレーンの開発責任者を務める人見光夫執行役員はこう語る。

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