東大カリスマ教授の「教育論+メディア論」 塩野誠×松尾豊 特別対談(下)

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塩野:パーソナライズというのは、結局、人間というデバイスの感覚に頼る部分が大き過ぎてしまう。どんなに複雑なアルゴリズムが動いていようが、人間の好き嫌いが全てという怖さがあると思います。そこがアルゴリズムのチューニングのしどころでしょう。

松尾:「このニュースは何%の人が見ています」みたいな数字だけあればいい気もします。そういう数字だけ見たい人もいると思うので。

塩野:アナリストのコンセンサスみたいな。みんなこう思っています、ということを可視化するわけですね。

今、書籍が完全にランキング次第だと言うじゃないですか。「ランキング売れ」ですね。ランキングに載った本がどんどん売れていく。パーソナライズと言いつつ、コンセンサスを重視する人間の感覚というのは、なくならないのでしょうか。

松尾:そうですね。情報はそもそも人が知らないほうが有利なので、いい情報は自分だけ知っておきたい。そのことと、みんなが知っているから自分も知らなければいけないというのは、そもそも違う話なのかなと思います。どちらかというと、リスクを回避したりコミュニケーションを円滑にしたりするための情報が、みんなが知っている情報。自分にだけ届けてほしい情報というのは、ほかの人が知らなければ知らないほどいい情報ということではないでしょうか。そこがけっこうゴチャゴチャになっている気がします。パーソナライズされた情報を見ながら、みんながブックマークした情報も気になる、みたいな。

塩野:そうすると、みんなが知っておくべきニュース、つまりコミュニティの8割が知っているコンセンサスと、誰も知らないニュースを、うまくバランス取りながら出し続けるとウケるのではないでしょうか? 所属するコミュニティのマスとスーパーニッチ。そう考えると、テレビなんかはまだまだ強い。

松尾:そうですね。そして、その機能は別のプラットフォームでやったほうがいいのかもしれません。

(構成:荒川拓、撮影:梅谷秀司)

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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