投資ファンド氷河期、信用収縮が招く淘汰の足音

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 新規上場激減も打撃 試金石は「すかいらーく」

金融が機能不全を起こしているのは、企業買収の入り口だけではない。08年の新規上場社数は52社。前年比で69社、約6割も減った。投資ファンドの主要な資金回収手段は、投資先企業の株式を上場させることだが、この点、資本市場の目詰まりは投資ファンドの動きを大きく制約している。

MKSの投資先の1社でもある福助は「投資ファンドの“出口”として、いちばんわかりやすいのは上場。社内でも上場の準備は進めている」(吉野哲社長)としている。同社は07年5月に豊田通商に保有株式の一部を売却したが、MKSの持ち分はまだ51%残っている。03年に民事再生法を申請し、これまで順調に業績は回復してきたが、「ここに来て商戦が厳しくなっている」(吉野社長)点がやや気掛かりだ。

投資ファンドの頭痛の種は、それだけにとどまらない。景気低迷の影響もあって、投資先企業の業績が思うように向上しないのだ。

業績不振による創業家社長の解任劇も記憶に新しい、外食最大手のすかいらーく。昨年末に大株主である野村プリンシパル・ファイナンス(PF)に対し、優先株を含む500億円の第三者割当増資を決めた。

「(増資引き受けは)当社にとって大きな節目。再生に向けた本格的な取り組みがスタートする」(谷真すかいらーく社長)。増資資金で08年12月末の有利子負債を約1500億円に圧縮し、レバレッジ・レシオ(融資残高÷直前12カ月のEBITDA)が7倍を下回ること、などというみずほ銀行を中心とした金融機関19行からの融資条件も、「一部緩和してもらった」(同社幹部)。今回の増資引き受けで野村PFの出資比率は、運営する投資ファンドの分(約36%)も含めて約78%にまで高まる。

増資に当たって作成した収益計画では、08年230億円(見込み)のEBITDAを11年に350億円に伸ばすと見込んだ。キャッシュフローが比較的安定している外食産業はこれまで、投資ファンドが投資しやすい投資先の一つと見られていたが、当初見込んだ08年のEBITDA計画は結局達成できなかった。売り上げがそれほど伸びない中でのキャッシュフロー増大を本当に達成できるのか、投資ファンドによる再生事例の試金石ともいえる。

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