変わりゆく「箱根駅伝」の“現在地点”

熱戦を控える選手たちのクールな本音

選手たちにとって箱根駅伝は目的地か、それとも通過点か?(写真:日刊スポーツ/アフロ)

青春時代を陸上部員として過ごしてきた筆者にとって、「箱根駅伝」には特別な思いがある。

ブラウン管から流れてくる映像は、地方の高校生にとって本当にまぶしかった。あこがれの箱根駅伝を目指して上京し、本戦に出場したのが72回大会(1996年)。スポーツライターとして78回大会(2002年)から本格的に取材を開始して、歴代のエースたちと向き合ってきた。日本テレビの事前番組や、レース後のドキュメンタリーなどでは、選手たちの箱根駅伝に対する熱き思いがあふれているが、近年の“箱根”は変わり始めている。

箱根駅伝は「日本マラソン界の父」と呼ばれた金栗四三の「世界で戦える選手を育てたい」という思いから、1920年(大正9年)にスタートした。長距離部員が足らずに他種目の選手が借り出されていた牧歌的な時代もあった。しかし、63回大会(1987年)から日本テレビが完全中継を開始して、箱根駅伝は単なる学生の大会から国民的イベントに変貌。現在、その人気はピークを迎えていると言ってもいいだろう。

今回で90回大会を迎える箱根駅伝。金栗四三の願いが通じたのか、今夏のモスクワ世界陸上1万mには箱根駅伝界のエースともいえる大迫傑(早大)が出場した。結果は21位(28分19秒50)と、活躍とまではいかなかったものの、大迫の中で「世界で戦う」という明確な目標ができたことは確かだ。エースの夢を後押しすべく、箱根駅伝で13回の総合優勝を誇る名門ワセダは思い切った行動に出た。

前代未聞のエースの行動

例年、早大は12月に「集中練習」をこなし、本番前の仕上げに入る。過去のエースたちも例外ではなかった。しかし、大迫は今回、チームとは“別ルート”で箱根に合流する。ロンドン五輪長距離2冠のモハメド・ファラー(英国)や、1万m26分台のゲーリン・ラップ(米国)ら世界の超一流選手が所属する「ナイキ・オレゴンプロジェクト」でトレーニングをするために、11月25日に渡米。チームとは別行動で、約4週間の米国合宿に入ったのだ。

箱根駅伝出場校で、主力選手が本番前にチームを離れることは前代未聞だ。学生時代、箱根路でヒーローになった早稲田大学・渡辺康幸駅伝監督はエースの別行動をこう説明した。

「本人が米国での練習を強く望んでいるのです。『箱根前の大切な時期に』という方もいて、賛否両論あると思います。大迫はチームのエースですが、駅伝では歯車のひとつとしか考えていません。彼がどこかを走ってくれればいいというスタンスですし、それはチームにも浸透しています。今季はトラックで目標をクリアしましたし、僕は『駅伝でも爆走しろ』とは言えないですよ。現地のコーチには1月2日に大切なレースがあることは伝えていますが、箱根駅伝のための練習になることはないでしょうね」

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