広大な海の小さな船上で学んだこと できないことを認める大切さ

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・できない分だけ伸びしろがある

「自分のできないことを認めることの大切さ」なんて自明なことを、東洋経済に書かないでと思われるかもしれませんが、実際、これはすごく難しいことなのかもしれないなと思いました。なぜならば、自分ができないことを、日常生活では避けて過ごすことができるからです。

私自身、不得意な分野にはあまり挑戦してこなかったので、「自分が何もできない」という経験をすることがそれほどありませんでした。そして、失敗経験がなかったことから、さらに失敗することが怖くなり、失敗をしないように、自分が不得意そうな分野にはそもそも挑戦していませんでした。

しかし、それだと今後の自分の成長には先が見えてるな、と思うようになりました。これは船の上だけでなく、留学全体を通して学んだことですが、自分ができないということを知りながらも、あえてそういう環境に飛び込むことは、自分を大きく成長させることにつながります。

そして、自分を成長させるためには、新たな環境に飛び込むだけでなくて、自分ができないことを認めること、なぜできないのか、どうすればできるようになるのか、ということを考えることが大事なのではないかなと思います。さらに、失敗を嫌なものとしてとらえるのではなく、「できない分だけ成長の伸びしろもある」(私のテニスコーチがいつもおっしゃっていた言葉です)と考えて、どんな状況も楽しめるようになることが、成長の大きな秘訣なのではないかなと思います。

・Beautiful Sail

つらいことばかり書いてきましたが、実際、クルーの一員として船に乗り込んだからこそできるぜいたくな経験をたくさんしました。しかし、私が経験した海の上での生活というのは、残念ながら言葉だけでは語り尽くすことはできません。

実際にそれを経験した人にしか、

船酔いのつらさとか、

360度、満天に輝く星の美しさとか、

海が見せるいろいろな表情とか、

文明から切り離された時間とかが、どんなものであるのかを本当に知ることはできません。

これはおそらくどんな経験においても言えることだと思います。どれだけ指南書などを読んで「知識」があっても、やっぱり自分自身が経験してみなければ、それを本当に「理解」はできないのかなと思います。

だからといって今すぐ荷物をまとめて海に出よと言っているわけではなく、自分にとって未知の分野に挑戦することは、ちょっとした苦痛と大きな成長、そして感動を経験することにつながると思うので、皆さんにも、どんどんチャレンジをしていっていただきたいなあ、と生意気に思ったりします。

今まで意識したことはなかったのですが、Watchで見張りをしていたときに私の名前「美帆」を英訳するとBeautiful Sailということにフっと気がつきました。

…なんとなく今回の旅に運命を感じつつ、この辺で締めくくろうと思います。

(構成:アゴス・ジャパン 後藤道代)

佐久間 美帆 米ウィリアムズカレッジ2年生

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さくま みほ

1992年生まれ。東京学芸大学附属高校卒業。2011年、東京大学文科一類合格。1学期間東京大学に通った後、同年秋から米国マサチューセッツ州のWilliams Collegeに入学。アゴス・ジャパンのホームページで「佐久間美帆のリベラルアーツカレッジレポート」を毎月更新
 

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