中小企業のデータを持たない韓国・中小企業庁 売上高も把握できず、他省庁との連携も未熟

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それならば、2015年に施行して3年間の猶予期間が過ぎた2018年には、中小企業がどれだけ増え、またどれだけ減るだろうか。正解は「誰も知らない」だ。中小企業庁関係者は、「個別の中小企業の売上高がどれだけになるかまで予測できない。実際に中小企業がどれだけ減るかはわからない」と打ち明ける。

ただ、問題はそれではない。中小企業庁は韓国の中小企業の売上高実態と関連する資料を持っていない。同庁や中小企業に関係する機関が発表する中小企業関連の統計は、基本的にでたらめと言っても過言ではない。同庁関係者は、「売上高全数調査がないことは事実」と認める。中小企業関連の研究機関も「売上高関連などの研究には限界がある」と口をそろえる。

データの裏づけがないまま政策決定

毎月、毎年、「中小企業動向」を発表する中小企業中央会関係者は、「統計庁から受け取る300万社の中小企業データを加工して報告書を作成するが、マスキング処理(別表で数字を見せなくすること)が多く、正確な統計を出すには障害がある」と言う。ある幹部は、「統計庁も中小企業の売上高調査はしない」と述べた。

では、中小企業庁は今回の改編案が施行されれば759社が卒業し、中堅企業683社が中小企業に編入されると、どう計算して発表したのだろうか。今回の政策を作製するに当たって使用したデータは、民間の信用評価機関である韓国企業データが保有する16万9000社の中小企業資料だ。中小企業全体の5.2%に過ぎない。さらに大きな問題は、韓国企業データの資料が中小企業全体の現況をきちんと反映していない、という点だ。韓国企業データが提供する中小企業資料は、大部分が政府の政策金融を受けた企業だ。政府のカネを借りていない優良な中小企業が抜けている可能性がある。

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