だから鉄道「1円刻み」運賃の対応は分かれた ICカード普及率だけではない、鉄道各社の事情

拡大
縮小

また、東急東横線や東京メトロ副都心線などに乗り入れるみなとみらい線を運行する横浜高速鉄道も、10円単位のまま。「運賃体系が2段階しかなく、ICカード1円刻み、切符を10円未満切り上げとすると、国交省の定めた改定率を超える」として、従来どおり10円単位運賃にした。

西武ホールディングス傘下の伊豆箱根鉄道も10円単位だ。小田原と大雄山を結ぶ大雄山線はICカードに対応しているが、駿豆線(三島―修善寺)ではICカードが導入されていない。「わかりやすさや2つの線区の公平性を鑑みて」(伊豆箱根鉄道)、10円単位のみの運賃申請を行ったという。

1円単位運賃は拡大するか

ICカードの1円単位運賃は来年4月から導入されるが、その際の乗客の反応によって拡大するか否かが変わってくるだろう。また、関西などでのICカードの普及率が拡大すれば、導入の余地は広がりそうだ。2015年10月に予定されている消費税率10%への引き上げ時が、その契機になるかもしれない。

一方で、複数の運賃を導入することによる混乱も懸念される。乗客の混乱はもちろん、システムのプログラムミスによる運賃の過収受等のトラブルは現時点でも少なくない。鉄道各社には万全の体制で運賃改定に臨んでもらいたい。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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