(第6回)組織幹細胞の再生医療への応用

渡辺すみ子

連載第1回は細胞修復の手段として幹細胞があること、そしてES細胞の話をした。

幹細胞:様々な形態や機能を持つ細胞に分化することができ、同時に、自分とまったく同じ性質の細胞に分裂することができる、未分化な細胞のことをいう。
ES細胞:あらゆる細胞に分化する能力を持つ細胞株。ES細胞を作るために受精卵が少し発生した胚を用いることから、ヒトES細胞の樹立には慎重な倫理上の配慮が必要となる。
分化:発生段階などでまだ特殊な機能(分泌、電気シグナルの伝達など)をもたない細胞が、より成熟した機能的な細胞に変化すること。
 一方、ES細胞のもつ問題点を解決した細胞として京都大学山中教授により作られたiPS細胞が発表され、再生をめざした基礎研究は活気づいている。

iPS細胞:ヒトの体細胞に複数の遺伝子を導入することにより、分化する能力を獲得した細胞。人工多能性幹細胞。
 実はひとえに幹細胞といってもiPS、ESは異なる細胞であるし、さらには今回の話題である組織幹細胞など、種々の幹細胞が存在している。

組織幹細胞:既に体の中にある組織(骨髄、肝臓、角膜、網膜など)から採取される幹細胞。=成体幹細胞、体生幹細胞
 上記の「幹細胞」としての性質をもっている細胞は単一ではなく、その作られた手段、材料、体のどこに存在しているかという場所、発生の過程のどの時期に存在しているか、などの違いをもつ様々な細胞が「幹細胞」としての性質を持っている。

 これらの細胞の実用的な相違点の一つの指標は、同じ幹細胞といっても、分化する能力が異なることである。いいかえると、分化する能力の程度が異なり、どのような細胞にも分化できるのか、ある範囲の特定の細胞にのみ分化できるのか、という違いがると考えられる。
 既にお話したように、ES細胞、さらにはiPS細胞も同様であるが、全能性と呼ばれる広範な分化能を持つ細胞は、どんな組織の修復にも利用可能であるという点で夢の素材でありながら、不要な細胞に分化する可能性を持つ、という点で使いにくさと表裏である。この使いにくさを克服するために、より分化能が限られていて、そしてかつ、自分自身の体の中にある幹細胞を眠りからさまして使うことができないか、というアプローチが注目を浴びている。このために活用を試みられているのが成体、すなわち私達の体の中に存在している組織それぞれの幹細胞である。
 組織幹細胞の定義と種類についてはあいまいな部分があるが、今回は組織の幹細胞、間葉系幹細胞とされる細胞について述べる。

図6-1:幹細胞のヒエラルキー
全能性(すべての細胞に分化する能力)を持つES細胞を頂点に、その分化能で幹細胞はヒエラルキーがあるといえよう。このヒエラルキーはかならずしも組織の発生過程を反映しているとはいえないが、一般的には細胞は発生が進むにつれ分化能が狭くなっていき、最後にはある特定の細胞にしか分化しえなくなると考えられている。
血液の幹細胞は白血球、赤血球などの血液の細胞にのみ分化し、神経の幹細胞は神経細胞、グリア細胞などの神経の組織を構築する細胞にしか分化することはできない。
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