2030年ニッポンの未来はどうなる? アベノミクスは?消費増税はどうなる??

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厄介なのが、対象の線引きだ。海外のケース(左図)では、同じハンバーガーでも店内で食べるか持ち帰りにするかで税率が大きく変わる。チョコレートの種類が微妙に違うだけで軽減税率の対象になったり、ならなかったりするのは理解に苦しむ。

フランスでバターが軽減対象になっているのは、国内の酪農産業を保護するのが狙い。フォワグラやトリュフも同様だ。軽減税率は特定産業の優遇につながるため、専門家には否定的な意見が多い。

もちろん最終的には財源が最大のハードルになる。食品に軽減税率を導入すれば、税収は1兆円超目減り。今回の消費増税は社会保障の財源不足を補うことが目的だが、10%への増税で得られる14兆円を前提に社会保障サイドの改革も議論されてきた。軽減税率を導入するのであれば、そもそもの消費税率をさらに上げないと全体の帳尻が合わなくなる。

結局のところ、軽減税率とは日本の財政が抱える構造問題そのものだ。財源を確保せず借金に付け回してきたのが、これまでの日本。単に増税を怠っただけでなく、減税策を濫発して税収基盤を細らせてきたことにも問題がある。

一見、庶民に優しい政策に見えるが、どこかで減税すれば必ずどこかで増税が必要になる。いつまでも「アメとムチ」のアメだけで済まされると思ったら、とんだしっぺ返しを食うことになる。

追加減税にGDPの下方修正 狂い始めたアベノミクス財政

「経済再生と財政健全化の好循環」のキャッチフレーズを掲げる安倍政権。だが、その財政運営は早くも綱渡り。アベノミクスが成功したとしても、「2020年度までに基礎的財政収支を黒字化する」との公約は達成できないからだ(下図)。

15年度と目前に迫った「基礎的財政収支の対GDP(国内総生産)赤字を3.3%にし10年度から半減」の中間目標すら、ギリギリの線。しかも、8%への消費増税に対応して打ち出した減税策によって、税収のベースは当初の政府試算から確実に後退している。
 そこに襲ったのがGDPの誤算。速報値で0.3%とされていた12年度の名目GDP成長率は、13年12月に発表された確報値でマイナス0.2%に下方修正された。建設現場の人手不足がネックとなって、公共投資が想定したほど伸びなかった。今後が思いやられる結果だ。
 さらに、肝心の15年度予算編成が大詰めとなる14年12月には、10%への消費増税決断が迫る。8%への増税判断と同様、財政出動や減税を組み合わせれば、その時点で中間目標の未達はほぼ確定──。これまで財政再建について前面に出るのを避け続けてきた安倍首相も、今度ばかりは逃げられそうにない。

2013年12月24日発売号の週刊東洋経済では110のテーマ・課題について、専門家と東洋経済記者が、現状と未来を徹底的に解説する。マクロ経済、各国の政治情勢、内外の産業、エンターテインメント&消費についてのほかに、近未来の2030年を予測。

団塊世代が70歳後半に突入する超高齢化社会、食料や病気、働き方、科学技術について、リアリティあるシナリオを提示する。さらに20年の東京五輪でどんな選手が活躍するのか、五輪を通じてどんな経済、社会になるのかも大胆予測。

週刊東洋経済2013年12月24日発売号) 

週刊東洋経済編集部
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