紙とネットでハイブリッド化、ベネッセ「進研ゼミ」の奮闘

紙とネットでハイブリッド化、ベネッセ「進研ゼミ」の奮闘

東京都日野市の中学生、村上拓哉くん(12)は週末の夜、決まってパソコンの前に座る。画面を立ち上げると、現れたのが小さなバナナの木。「毎回水やりをするんだ」と、成長していく木に満足そう。ログインすると勉強机の絵が現れた。机の上に並んだ教科書から、算数の教科書をクリック。動画によるクイズ形式の問題を正解すると、画面は「パーフェクト」にスイッチ。「好きなのは算数と理科。図形や実験も、動画だとわかりやすい」。村上くんはこの勉強法が気に入っている。

今、ベネッセコーポレーションが力を注ぐ新教材が、2008年4月に開始した「中学講座+i(プラスアイ)」だ。紙の教材とインターネットのWeb教材とを組み合わせた、新しいスタイルの通信教育だ。アニメーションや動画を多用し、理科の実験や英語の発音などで学習効果が高まるよう工夫されている。さらに、クラス制度を設けることで子供たちの孤独感を減らし、やる気を支える。学費は通常の教材に960円上乗せした月6800円。中学1年生向けに約4万人でスタートした会員数は、09年1月からの「中学準備講座」では8万人を上回る勢いだ。

この好発進は業績にも表れている。通信教育は連結営業利益の7割を稼ぐ収益柱。09年3月期売上高は前期比7・7%増の4140億円、営業利益は会社想定を上回る11・8%増の390億円となりそうだ。

1965年に高校生500人からスタートした「進研ゼミ」は、中学講座、小学講座、幼児向け講座の「こどもちゃれんじ」とラインを広げ、合計362万人が受講する巨大サービスに成長した。売り上げ規模で最大の中学生の受講者数は64万人(08年10月現在)で、日本中で5人に1人が受講している勘定だ。

だが、「会員数は00年がピーク。ライン拡充も一通り終わり、紙媒体だけでのさらなるシェア拡大は難しい」と福島保社長は話す。03年には会員数の落ち込みで業績も低迷したが、難易度別講座を設けるなどして何とか挽回してきた。ここから先、事業として伸ばすためには、是が非でも客単価の引き上げが避けて通れない。その使命をを背負っているのが、このプラスアイなのだ。

進研ゼミ生き残るための二つのコンセプト

実は、ベネッセでは過去にも、これと同様の教材開発に取り組んだ経緯がある。99年、CD-ROMとインターネットを活用した「進研ゼミ中2講座チャレンジネットコース」を開講するが、たった3年で休止に追い込まれている。会員数が想定を下回り、原価を吸収できずに採算が悪化したためだ。

苦い記憶が残るベネッセにおいて、最初の難関が社内の理解を取り付けることだった。Web教材の開発には3年間で45億円以上の投資が必要。「少子化で、誰もが何とかしないと、と頭では思っていたが、プラスアイでいいのかという疑問の声は大きかった」(的場一成教育事業本部執行役員)。福島社長の決断は「インターネット環境は格段に向上した。次世代通信教育の開発は避けて通れない」。各部署から11人のプロジェクトメンバーが選ばれ、06年、本格的な開発が始まった。


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