「働かないオジサン」は、日本にしかいない? 「一体感」を求める経営が招く弊害

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会社組織には、いろいろな形態がありうる。しかし一定規模以上の組織であれば、階層構造をフラットにして運用できる組織は、私の知っている範囲ではほとんどない。

皆さんが働く会社を思い浮かべてほしい。会社の屋台骨を支えている組織は、明確なピラミッド構造になっているだろう。

現場からトップに向かう昇進の流れ 

新卒一括採用された社員の多くが、図にある現場→ミドル→トップの階層を上位に向けて駆け上がろうとするので、結果としてポストを確保できなくなり、働かないオジサンを生み出す。

欧米企業のように、ミドルやトップ層に必要に応じて中途採用が行われるのであれば、何ら問題は生じないない。そういう意味では、働かないオジサンの課題は極めて日本独特のものであり、欧米のマネジメントの本をいくら読んでも解答は見い出せないのである。

この一丸となって階段を駆け上がってくる中高年社員に対する処遇として、年齢による役職定年制早期退職勧奨などの制度が生まれている。マスコミに取り上げられる「追い出し部屋」も、対応策のひとつといえるかもしれない。社員全員に一体感を持たせる働き方を求める代償として、こういった対応が必要になっているとも言える。決まった年齢で退職になる定年制度も、この課題を解決するためのひとつの方策だろう。

ところが「高年齢者雇用安定法」の一部が改正されて、2013年に施行され、実質65歳まで定年が延長された。企業に対してさらなる対応が要請されている。このため多くの企業で、中高年社員に対するキャリア研修ライフプラン研修などが盛んに行われているようだ。

次回は、働かないオジサンを生み出す構造を人事評価とも絡めて、もう少し深く考えてみたい。

楠木 新 人事コンサルタント

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くすのき あらた / Arata Kusunoki

1954年神戸市生まれ。1979年京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に経営企画、支社長等を経験。47歳のときにうつ状態になり休職と復職を繰り返したことを契機に、50歳から勤務と並行して「働く意味」をテーマに取材・執筆・講演に取り組む。2015年に定年退職した後も精力的に活動を続けている。2018年から4年間、神戸松蔭女子学院大学教授を務めた。現在、楠木ライフ&キャリア研究所代表。著書に、『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)、『定年後の居場所』(朝日新書)、『定年後』『定年準備』『転身力』(共に中公新書)など多数。

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