「働かないオジサン」は、日本にしかいない? 「一体感」を求める経営が招く弊害

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また、意識していない人が多いと思われるが、日本の多くの会社では、社員の能力に対する平等意識が強く働いていて、努力すればだれもが上位職に上がることができるという認識が社員にある。総合職的な働き方をする社員は特にそうである。昇格を決める会社や人事部も、同様な考え方を基盤に持っている。

言い換えれば、欧米のように、少数のエリート社員が、多くのノンエリート社員をひっぱっていくという形態を、会社も社員も望んでいない傾向が強い。そのため会社をひとつの「場」としてとらえ、そこで働く社員の感情的な一体感を求めているのである。そういう前提で考えれば、新卒一括採用は、未経験者にいろいろな職種を経験させながら、適材適所を図ることが可能である。先ほど述べたメンバーシップ契約が社員を規定していて、長期的な雇用がそれを支えている。

新卒一括採用は、単に採用方式の問題ではなく、組織運営のスタイルの表れのひとつなのである。そのため、このやり方を大幅に変更することは、相当、困難を伴うのだ。

組織のピラミッド構造は変更できるのか?

また、ピラミッド型の組織構造を変えて、ポストを増やせば、働かないオジサンの増加を防ぐことはできるのだろうか? 結論から言えば、これも難しいだろう。

昨今ではIT技術が発展したので、これまでのピラミッド型の組織ヒエラルキーが崩れ、水平的なネットワークが中心になると主張する見解もある。しかし、組織は階層別になっていることによって、本質的な役割を果たしている。

『組織戦略の考え方』(ちくま新書)で、一橋大学の沼上幹教授は、この点を簡明に指摘されている。教授は、組織設計の初めの第一歩は、プログラムヒエラルキーであるという。

出所:沼上幹『組織戦略の考え方』(ちくま新書)をもとに筆者作成。

繰り返し出現する問題を解決する手順やルールである「プログラム」をルーチン化して現場が処理し、この「プログラム」の例外事象は、上位のヒエラルキーにいる上司が、その都度解決する。これが組織設計の基本中の基本であると主張され、組織の階層別の役割を、上の図のように示している。

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