オーケストラ、それは我なり 中丸美繪著

オーケストラ、それは我なり 中丸美繪著

「手兵」大阪フィルハーモニーに君臨した朝比奈隆が亡くなって7年になる。93歳にしてなお指揮台に立とうとしたエピソードには誰もが驚くだろう。熱狂的な朝比奈ファンでなくともその生涯と音楽観には大いに興味を抱かされる。

音大出でないというハンディもものかは、あるときは天真爛漫(らんまん)な駄々っ子、あるときは楽団員の立場などまるで無視の暴君。その人間像が余すところなく描き出される。出自、葛藤、組合との軋轢、組織混乱なども本人は「自由に書け」と言ったらしい。同じスタイリストでありながら帝王カラヤンとは全然違う。

朝比奈といえばブルックナーにベートーベンだが、人間性と音楽的特質が、曲にうまくはまっていたという指摘が紹介される。確かにそうだ。大フィルと実に54年間、世界でも空前の関係は、その希有な個性なくしてはありえなかった。素材の面白さと取材力の幸せな結合の所産であり、貴重な音楽史ともなった。(純)

文藝春秋 1800円

Amazonで見る
楽天で見る

関連記事
Topic Board トピックボード
人気連載
Trend Library トレンドライブラリー
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

Access Ranking
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!

※過去48時間以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※週間いいね数のランキングです。

トレンドウォッチ
行き詰まる東電支援<br>原発最後の選択

賠償費用も廃炉費用も想定から大きく上振れし、東電支援スキームは破綻の瀬戸際。東電の発電所を売却し、その代金を賠償や廃炉費用に充て、東電を送配電会社に再編する構想が浮上。