ファーウェイの奇跡を生んだ中国の甚大な加護 3月の正念場を巨大企業は乗り越えられるか

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「ファーウェイの奇跡」の秘密とは?(撮影:梅谷秀司)

これから3月にかけ、通信設備の世界最大手・中国ファーウェイ(華為技術)をめぐるアメリカと中国の駆け引きは、さらに神経質な展開に突入する。

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アメリカのトランプ大統領は2月22日、ホワイトハウスで記者団に対し、3月の米中貿易協議でファーウェイに対する起訴を交渉材料にすることを示唆した。もしアメリカ司法省によるファーウェイへの起訴を交渉材料にしたなら、「起訴の背後には政治的な企みがある」という中国政府の主張を認めるようなもの。貿易協議がまとまる一方、アメリカ国内には新たな批判も起こるだろう。

またカナダで拘束されている孟晩舟副会長(ファーウェイ創業者・任正非氏の実娘)がアメリカに引き渡されるかどうかの判断も、大詰めの局面にある。

いずれにしても今後1カ月程度で、ファーウェイをめぐる大きな動きが予想される。日本には同社の開発パートナーや下請け企業が多いため、この動きは日本企業の業績や株価にダイレクトに影響を及ぼす。ファーウェイ問題が対岸の火事でない以上、日本人は「なぜアメリカはここまで粘り強くファーウェイを問題視するのか」という、議論の本質を理解しておく必要がある。

ファーウェイについては、サイバースパイ疑惑を指摘する向きが多い。だが実はこの疑惑について、明確な証拠が示されたことはない。「やっていない」ことをファーウェイは証明できないが、「確かにやっている」という材料も存在していない。

これに対し、アメリカが明確な根拠を持って問題視しているのは、ファーウェイの成長力や競争力に関わるもっと本質的な部分だ。アメリカ政府の公開資料や高官の発言を丹念に追うと、「ファーウェイは中国共産党政府から特別な恩恵を与えられており、政府の意向をくんで活動する」という論理が繰り返し展開されていることがわかる。

「政府に対して恩義のある企業」

例えば今年1月、アメリカ司法省がファーウェイと孟副会長、関連企業を起訴した際、司法省の会見に出席したFBI(アメリカ連邦捜査局)のクリストファー・レイ長官はこう指摘している。

「アメリカ人としてわれわれは、価値観を共有できない外国政府に対して恩義のある企業が、アメリカの通信市場に潜り込むことを警戒しなければならない」

次ページアメリカ側の指摘を全面否定するファーウェイ
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