デジカメ勢力図に激変の兆し 体力勝負で脱落する中堅も

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デジカメ赤字に泣く中堅各社、ソニーは黒字に

デジカメ事業で、オリンパス、富士フイルム、パナソニックは13年3月期に赤字を計上。今期も想定を超えるコンパクトの販売縮小で上期に赤字を計上。通期でも事業赤字が続く見通しだ。

一方で、業界3位のソニー<6758.T>は13年3月期にデジカメ事業で黒字を確保した。12年9月の段階で低価格コンパクトに見切りをつけ、いち早く高級コンパクトやミラーレスにシフトして単価を上げ、コンパクトカメラの落ち込みをカバーした。

今期は、想定以上にコンパクトの販売が落ち込んでいるが、10月からスマホに取り付けられるレンズ型カメラ「QX」を発売したのに続き、11月には一眼レフブランド「α(アルファ)」の名前を付けたミラーレス一眼「α7」を投入。今期もミラーレスシフトをさらに進め、デジカメ事業全体で増収増益の計画だ。

石塚茂樹デジタルイメージング事業本部長は「一眼レフもやるがミラーレスも強化して、2強とは違うユニークなポジションをとる」とのスタンスを示す。

ソニーが黒字基調を維持しているのは、カメラの中核部品のイメージセンサーを内製していることが大きい。これに加え、デジカメだけでなく、ビデオカメラ、プロ用カメラ、監視カメラなどを一体的に運営することで設計・開発を共通化し、規模によるコスト管理を実現させたことが寄与しているという。

石塚氏は「カメラの市場が急に変わっても、(どんなモデルを作るのか)設計・開発リソースの傾斜配分を私の判断で一気に変えられる。部品や部材の在庫を売れる商品に流用することで、利益をコントロールすることができている」と指摘する。

過当競争で合従連衡の動き

デジカメは、日本メーカーがレンズ交換式カメラで9割以上の市場シェアを握る独壇場。薄型テレビや半導体では海外勢に完敗したが、カメラは最後のとりでと言える。だが、そこには大手2強の支配の下で、ソニー、オリンパス、富士フイルム、パナソニック、リコー(ペンタックス)<7752.T>、カシオ計算機 <6952.T>などがひしめき、メーカー同士で体力を擦り減らす構図が表面化しつつある。

伸び悩んだ市場では下位メーカーが脱落し、上位メーカーが生き残るのは歴史が証明している。ある大手メーカー幹部は「デジカメのメーカーは多過ぎる」と指摘した。

一方で、別の中堅メーカー幹部は「いまや共通の敵はスマホ。カメラ業界でつぶし合うのではなく、相互の協力を考えなければならない」と述べ、合従連衡を模索する考えを示している。

クレディ・スイス証券アナリスト、吉田優氏はデジカメ市場の将来について「寡占化が進んで、スケールメリットとブランド力があるところだけが生き残る。その意味で、キヤノン、ニコン、ソニーがその条件を満たしていると言える」と述べ、今後数年にかけて厳しい時代が訪れるとの見方を示している。

(村井令二 ソフィー・ナイト 編集:田巻一彦)

*誤植を修正して再送します。

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