ワインの地から「この技術買ってください」--フランス・ボルドーの「フォトニクス」セミナー


 フランス中西部、アキテーヌ地方に位置する古都ボルドー。赤ワインの産地として世界的に知られている、この街で12月中旬、光関連技術(フォトニクス)の国際セミナー「インベスト・イン・フォトニクス」が開催された。

ボルドーはパリに続き、フランスで2番目に光関連技術の研究所が仏政府により設置され、1970年代からレーザー技術の研究を行ってきた。現在は世界最大級のレーザー研究機関「メガジュール」を擁することでも知られる。ボルドーにあって、フォトニクスは将来、ワインと並ぶ柱となりうる、隠れた地場産業だ。

今回のセミナーを企画したのも、地元のボルドー商工会議所で「地場産業のさらなる振興」を目指した。技術はあっても資金がなく苦労しているベンチャー企業にプレゼンテーションをさせ、ベンチャーキャピタルからの出資を募る、というのがイベントの最大の目的だ。
 
 光関連技術は日本が世界的に強い分野であるだけに、集まったベンチャー企業のなかには日本企業に積極的な売り込みを行っている会社も多数みられた。
 
 フランス・グルノーブルのディスプレー会社「ミクロオレッド」(MICROOLED)は、従業員17人の会社。デジカメ用の有機ELビューファインダーなどの開発、製造を行っている。対応する電圧が通常の有機ELパネルの半分の3ボルト程度と低く、「省エネ効果があるほか、ピクセルを小さくできるため画質も従来品よりよくすることができる」(エリック・マルスリン-ディボンCEO=写真)。キヤノンやパナソニックなどに売り込みを行っているという。

また医療用光源を手掛けるカナダの「ワン・ライト」(0NE LIGHT)は、製品価格が100ドルと通常品の30分の1程度の使い捨て内視鏡向けに、特殊な光源を開発している。
 
 通常の光源は赤、緑、青と3原色の光をそれぞれ用意しないといけないところ、同社の光源は1つで3原色すべてを出すことができる。これにより、大きいほど高価になる画像センサーを小型化できるメリットがある。通常使用している画像センサーなら200ドル程度かかるところ、1個5ドルの携帯電話用のセンサーを使用することができる、という。
 
 使い捨て内視鏡は製品自体が安価なうえ、1回40ドルかかるといわれる器具の消毒が不要となる。感染症などのリスクを防ぐためにも有効だ。ただ、米医療機器大手のボストン・サイエンティフィック社が、かつて開発を宣言したものの「その後は話を聞かず、最近は進展していないようだ」(オリンパス広報・IR部)。技術革新の早い世界であるだけに、技術的課題の早期解消が求められる。
 
 そうした研究開発のためにも、ベンチャー企業がのどから手が出るほど渇望しているのが資金だ。前述「ワン・ライト」のニック・マッキノン社長も「今後の研究開発や製造設備の購入に5億~10億円の資金が必要だ」という。
 
 だが、市場は彼らベンチャー企業にとっては日を追うごとに過酷になりつつある。ビジネススクール「インシード」(INSEAD)教授で、みずからもベンチャーキャピタリストであるビル・マギル氏は「市場環境は最悪だ。光関連技術のベンチャー企業でも、多くの会社は倒産に追い込まれている」と厳しい現状を語る。独ベンチャーキャピタルのクリスチャン・ナゲル氏も「光関連技術の分野は、多額の研究開発費がかかると同時に、製品化までに時間がかかる我慢比べの世界。画期的な技術を確立しながら、市場がなくつぶれてしまった会社も見てきた」と最先端技術が埋もれてしまう現状を憂慮する。「技術自体よりも、それを使うアプリケーションを見つけることが重要だろう」と生き残り策を指南する。

セミナーによる資金集めの次は、アプリケーション探し--。ベンチャーにとって苦難は続く。それだけにセミナーの発信力を使ってビジネスチャンスの端緒を開きたい、との熱気が会場には充満していた。
(桑原 幸作 =東洋経済オンライン)

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