「阿波踊り」の再生策がまるで決め手を欠く理由 組織を複雑にしてもろくな結果は出ない

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地域活性化には何が必要か(デザイン:新藤 真実)

2014年の第2次安倍改造内閣発足と同時に打ち出された地方創生。人口減少や地域経済縮小、東京一極集中を解決するために、さまざまな政策を進めてきたが、成果は芳しくない。

2月18日発売の『週刊東洋経済』は、「地方反撃」を特集。地域活性化には何が必要なのか。成功している「稼ぐ街」に足を運び、その実態を探っている。

『週刊東洋経済』2月18日発売号(2月23日号)の特集は「地方反撃」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

地域活性化の失敗例としてありがちなのが、「イベント地獄」に陥ることだ。集客目標が毎年定められ、観光振興の名目で自治体は多額の補助金を投入する。運営主体は望まぬ拡大を強いられ、いつしかイベント開催そのものが目的化。赤字構造が放置され、消耗していく──。

その象徴といえるのが、徳島の夏の風物詩である阿波おどりだ。主催者の1つである徳島市観光協会が4億円超の累積赤字を抱えていることが発覚し、昨年3月に破産手続き開始を申し立てた。同8月に阿波おどりは行われたものの、フィナーレに全員参加で行う総踊りを実施するかどうか、祭りの当日まで引きずる大混乱。4日間の人出は約108万人と、前年比で15万人減った。

民間委託で複雑化する組織

混乱の火種はいまだにくすぶっている。「阿波おどり事業検証有識者会議」は1月24日、提言書を出した。収支の責任を明確化するため、事業を民間委託するというのが主な内容だ。

「事業の課題の一つは、赤字となった場合の責任の所在が明確ではないということです。(中略)徳島市観光協会では、徳島市が損失補償をしていたために、収支均衡に対する視点が欠如し、当事者意識が希薄になった」と提言書では指摘されている。

ただし「公益性のある部門に対して補助金を支出するのは良い」としており、市の補助金は継続する。運営体制も、実施主体である阿波おどり実行委員会、その諮問機関である阿波おどり運営協議会の2層構造が存在する中で、さらに運営を外注するという複雑な組織図が提案されている。問題解決を図るうえで組織を複雑にしてろくな結果が出ないのは、企業経営も地域経営も同様である。

提言書を受けて、阿波おどり実行委員会は今夏からの民間委託を決め、2月15日に募集要項を公表した。全国から事業者を公募し3月下旬に選定するが、予断を許さない。事業者は実行委員会が示した事業計画に沿って運営しなければならず、有料演舞場の価格や踊り手から徴収する参加料の金額は事前に指定されている一方で、500万円もの固定負担金や利益の20%以上の納付を求められているなど、公募要件には縛りが多い。阿波おどりを盛り上げながら、今までにない多様な形式で稼ぐ優秀な事業者がいくつも集まるかは不透明だ。

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