日本とは何かを語れなければ、日本の役割は議論できない

村上隆インタビュー

村上隆インタビュー--日本とは何かを語れないのに日本の役割は議論できない

--現在の世界的な経済危機は創作活動に影響を与えていますか。

バブル崩壊とは、若いアーティストたちがデビューし、今までの概念を全部ぶち壊して新しい価値観を作り出せるという、クリエーターにとってすばらしい瞬間です。アートの鑑賞者にとっても大きなベネフィットが訪れる。なぜなら、不当な意味づけや価格づけを心配することなく公平に鑑賞できるからです。現況がピンチとチャンスのどちらかというと、ずばり、チャンスです。

--アジアの美術品市場が急速に冷え込んでいます。

アジアのアートオークションでは、香港のクリスティーズが独創的なコンセプトの展開をして、どんどん新企画を出していけば、西欧とはまったく違ったマーケットを確立できます。でも、そうした香港クリスティーズに追従した他のオークションはブーム目当てで独創性がなく、今後の展開は望めないでしょう。今回のブームを不必要にあおったのがほかでもない、こうした追従オークションでした。

アートのマーケットは20年周期で盛り上がり、ピークに達し、疲弊し、シュリンクし、また立ち上がる。20年前私はこの現象をこの目で見ました。作品が巨大化し、コンセプトよりもビジュアルが優先しマーケットはわかりやすさを追求していました。つまり、アートファンではない人間が大量にマーケットに流入し、それらへの訴求効果を増大させることに集中していくのです。業界にはそういった流れの濁流がうねっていました。クライシスは見えやすい形で起きていたのです。

--村上さんはルイ・ヴィトンとコラボレートするなど、ビジネスセンスが旺盛です。これは世界のアートシーンでは異端ですか。

アップルの創始者、スティーブ・ジョブズは異端ですか。はい、もちろん異端です。そして彼はビジネスセンスが旺盛です。では彼の存在は社会の中でどのような意味を持っているのか。それは「英雄」です。継続した成功を維持すれば英雄、短期で終われば現象として閉幕するだけです。

--なぜ毎年GEISAIを行うのですか。徒手空拳で道を切り開いた村上さんのようなハングリー精神を若手にも求めるべきでは?

私のような粘着質かつポジティブシンキングで逆境に耐えることができるアーティストはこの20年間ほとんどいませんでした。そんなパーソナリティでなくては生き残れない世界なんです。しかし、傷つきやすい感性の中に宝の輝きが眠っている人々を多く発見し、この才能を生かさない手はないとも思いました。GEISAIのスケールはずいぶん大きくなりましたが、まだ特別免税など国や行政のサポートが足りません。日本の文化をここまで底上げしているのです。少しはメリットを与えてほしい。やっている身として、社会からの無理解は本当につらいのです。

今回の経済崩壊は美術館ビジネスにも変革を迫っています。美術館はスポンサーの存在が消えた後、どのように新人アーティストを発掘し育てるのか。突然消えた蛍光灯のように現状は迷走状態です。GEISAIはそんな中で異彩を放つ存在です。セレクトされたアーティストたちのブースでは、作品が展示されるだけでなく販売もされるからです。どう売るのかまで考えたオーガナイズは他にはないオリジナリティです。

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