蓄積した資金力や技術力をフル活用し、国際貢献を--行天豊雄・国際通貨研究所理事長・元財務官

蓄積した資金力や技術力をフル活用し、国際貢献を--行天豊雄・国際通貨研究所理事長・元財務官

--世界的な金融危機は今、どの段階にあるのでしょうか。

最悪期を脱したとはまだ言い切れないが、先が真っ暗でまったく見えないという状態ではなくなった。そろそろ底が見えてきたのかな、という感じはしています。危機対応のほうも、異常なほどの規模とスピードで、米国はじめ各国でとられており、そうした効果も考えると、今後まったく予見もできないような危機的な状況が起こるとは思えません。

今いちばん問題なのは、クレジットクランチ(信用収縮)と言われる状態。ただ、スプレッド(各種金利の米国債との金利差)を見ると、全般的にはそろそろ山は過ぎたかなという感じはあります。金融機関の健全性の問題でも、米国当局が大量の公的資金を使った救済や破綻処理を行ったことで、今後さらに大きな金融機関が破綻する可能性はかなり減ったのではないでしょうか。

問題は実体経済です。住宅市場の混乱から始まって、消費や投資、そして雇用、貿易へとほとんど全部の分野に広がった。しかも、米国の輸入減少が世界全体に影響を及ぼしています。今のところは、世界全体を見回しても、09年はまだ回復への動きが明らかに始まったと言えるかどうか、わからない状況でしょう。

--オバマ新政権は大規模な経済対策を打ち出すと見られています。

意表を突く巨額な対策になる可能性がある。私は1兆ドル近い規模になるのでは、と見ています。米国のGDPが約13兆ドルだから、1兆ドルならGDP比7~8%に相当します。

ガイトナー次期財務長官、サマーズ次期国家経済会議委員長、ボルカー経済再生諮問会議議長がトリオで経済対策に当たりますが、3人とも緊急避難的に大きな財政支出をする点で異論はないでしょう。それだけの規模ですから将来のリスクも背負う。問題は、膨大なインフラ投資や環境対策が、必ず生産性向上や雇用創出など中長期的な経済活性化に役立つということを一般国民やマーケットに納得させられるかです。

いま米国人は、自信に傷がついたという意味で相当に堪(こた)えている。経済的にダメになったという以前に、イラク問題などで世界的指導力が落ちた、米国の時代は終わった、とかなりの人が考えるようになっている。そこへ景気後退の追い打ちで、米国人の危機感は非常に強い。これをどうやって巻き返すかです。

この間、『The Post−American World(アメリカ後の世界)』という本を書いた『ニューズウィーク』誌のザカリア編集長と話をしましたが、中国の台頭や外交の失敗など問題は多いが、最後は経済の復活だと彼らは考えている。それが確認されれば、国際的な地位も回復するだろうと。

オバマ氏は米国経済は復活再生への道を歩み始めたという認識をマーケットに植え付けたい。この努力の成否が世界の5年先、10年先の姿をも決めることになるでしょう。

--対策や改革がうまくいかなかった場合の副作用は。

当然かなりの混乱はあるでしょう。雇用は増えず、景気も回復しない、財政赤字だけ増えていくということになれば、ドルに対する信頼は落ちるでしょうから、ドルからの逃避が起こるリスクは当然ある。

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