相次ぐ巨額の資本調達、メガバンク奔走の内実


 金融市場が機能不全に陥り、景気の急悪化も直撃し、企業経営者は資金繰りに奔走している。一方、銀行の貸し渋りが政財界から指弾される中、メガバンク3グループは相次いで巨額の資本調達に踏み切った。先行した三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の7900億円が最大で、年末までに3メガが調達する資本は合計2兆円近くになる見通しだ。

だが、これが企業融資に直結するわけではない。そもそもメガバンクの資本余力は不十分だった。公的資金は2006年に完済したが、10年前に発行した優先出資証券の償還期が08年から09年に集中。収益面では金融市場の混乱で損失を被り、信用収縮で調達コストも上昇した。

国際的に業務を行う銀行にはリスクアセット(資産に一定のリスクの掛け目をつけたもの)に対し、8%の資本が必要という自己資本規制がある。9月末時点で3メガグループは10~11%あるが、余裕はない。リーマンショック以降、株価が下落し、株式含み損益の悪化で銀行の自己資本がそがれ、景気後退によって融資先の財務悪化リスクも高まっているからだ。

 TierI(中核的自己資本)比率ではMUFGが7・63%、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)が7・36%、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が7・08%と低い。巨額調達でもその維持で精いっぱいとみられる。欧米の大手銀行はTierIだけで10%を超す。

巨額調達は今回限りか

金融混乱の最中、果敢にも米モルガン・スタンレーの優先株取得に9500億円を投じたMUFG。10月の発表当初、資本維持のため優先株と普通株で9900億円を増資する計画だった。優先株では日本生命、明治安田生命など親密な生損保から3900億円を集めたが、株価急落で普通株での調達が予定より2000億円減り、増資額は7900億円にとどまった。

 10月以降に株価が5割も下落していたSMFGでは、普通株の増資をあきらめ、12月に優先出資証券の発行で5382億円を調達した。しかも生損保だけでなく、三井物産など事業会社二十数社にも出資を仰ぐという異例の形態。実は、同社には09年1月に2837億円、同年6月にも3400億円の優先出資証券の償還が来る。市場の底が見えない中、手当てに必死だったともいえる。みずほFGも第一生命や明治安田生命など生損保から優先出資で当初計画の3000億円を上回る額を集める模様だ。

一連の増資は、銀行と生保が株式の持ち合いで支え合い、システミックリスクが懸念された10年前を彷彿とさせる。ただ、大手生保の幹部も「運用難の中、(銀行の)優先出資証券の利回りは3%台後半~5%と高い分、国債と比較して妙味はある。だが、流動性や集中リスクを考えると限度がある。借り換え程度ならともかく、巨額増資に再び応えることは難しい」と話す。“事業会社動員”にも見られるように、一段の金融市場の底割れに対する資本の出し手は乏しい。

 08年12月期から時価会計が緩和されることもあり、銀行からは「繰延税金資産の規制資本への算入限度額(Tier�の2割まで)を緩和してほしい」と、追加要求の声も聞かれる。今後、不良債権処理の拡大に伴い有税償却が増加し、繰延税金資産の積み上がりが予想されるからだ。

だが、金融庁幹部は「算入限度額は、健全性の観点から議論を尽くした結果。国際的にも繰延税金資産は資本の質として低いというのが共通認識で、説明がつかない」と否定的。無税償却を可能にすることが本筋だが、まだ法人税を払っていない銀行が多い中、政治的には困難だ。

流動性枯渇が長期化するようなら、日銀によるCPや社債買い上げで大企業の資金繰りに対応し、銀行に中小企業向けの融資余力を持たせる手立てもある。早く企業金融逼迫を解消するためには、間接金融(銀行)のパイプ拡充を図るメガバンクへの公的資金注入の議論も高まるだろう。

(大崎明子 =週刊東洋経済)

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