アフリカ初の高速鉄道、灼熱のモロッコに登場 ジブラルタル海峡とカサブランカをTGVが結ぶ

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車内1等車が1+2席、2等車は2+2席配置で、リクライニング(1等車は電動)、足置き、読書灯、充電用コンセントがあり、荷物置き場はデッキ付近と車内中央にも設置されていた。シートカラー(1等:赤、2等:緑)を除けば、SNCF仕様に準じている。

車端部にあるモニターで停車駅案内や走行速度などが表示されるが、車内放送と同様にアラビア語とフランス語の2カ国語のみ。車内の各種サインを含めて英語での案内はない。

2階部に設けられたカフェカー車内(筆者撮影)

カフェカーは2階部で、各種ドリンク、軽食、スナック類を販売しカウンターテーブルで飲食できる。イスラム教の国だけあってアルコール類の販売はしていない。

列車は左側通行で在来線区間では時速180~200㎞前後で走行し揺れも少ない。車掌が検札に来て、乗車券のQRコードを端末で読み取っていく。

45分ほどの走行で、次の停車駅ラバト・アグダルに到着した。次のケニトラ駅を出発すると、しばらくして在来線と別れ高速新線に入る。まだ慣らし運転中なのか時速300㎞を超えることはなかった。全長約3.5㎞のエル・アシェフ高架橋を渡り、ほぼ定刻にタンジェ駅に到着した。

総延長計画は1500km

TGV系車両の国外展開は、スペイン(AVE)、アメリカ(Acela)、韓国(KTX)に次いで4カ国目。建設費はヨーロッパでの約半分程度で、1㎞当たり約9650万ディルハム(約11億円)で完成させることができた。そのため全般的に公共交通料金の安いモロッコにおいて、ONCFでは高速鉄道の運賃が極力高くなることを抑えることができた。

新駅舎となったタンジェ駅。駅名はアラビア語とフランス語で表示(筆者撮影)

第2期工事区間としてケニトラ―カサブランカ間の高速新線計画も決定しており、完成すれば所要時間はさらに短縮され、乗客数も現在の2倍の年間600万人が見込まれる。

将来的には、カサブランカからマラケシュを経由しアガディールへ至る路線と、ラバトより分岐しフェズを経由するアルジェリア国境に近いウジダとを結ぶ新たな2路線を加え、総延長1500㎞の高速鉄道網を整備する計画もある。灼熱のアフリカの大地を走る高速鉄道は、どこまで延びていくのだろうか。

三浦 一幹 トラン・デュ・モンド代表

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みうら かずみき

1960年東京生まれ。世界の鉄道フォト・ライブラリー「トラン・デュ・モンド」代表。世界各国の鉄道取材・撮影にあたる。海外鉄道研究会、日本旅行作家協会会員。

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