パナソニックは来年2月メドに三洋電機株をTOB、エネルギー等の戦略分野へ1000億円投資へ

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パナソニックは来年2月メドに三洋電機株をTOB、エネルギー等の戦略分野へ1000億円投資へ

パナソニックと三洋電機<6764>は、パナソニックによる三洋子会社化で両社が最終合意し、来年春までに三洋株の株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。TOBは全株主を対象に2月をメドに行う予定で、買取価格は普通株1株=131円。パナソニックは、すでに三洋の大株主3社(ゴールドマン・サックス証券、大和証券SMBC、三井住友銀行)から同条件でTOBに応じる合意を取り付けているため、一般株主が応じなくても7割前後の株式取得は確実で、3月末までに三洋を子会社化する。当面、三洋の上場は維持されるが、パナソニックは将来的な経営統合を念頭においている。

両社は、大阪市内で共同会見。パナソニックの大坪文雄社長は、「商品、事業の補完や技術の融合、資材調達・ロジスティック網の共通化による効率化など、両社の提携によるシナジーは非常に大きい」とコメント。シナジーの数値目標としては、2012年度に営業益で800億円の増益効果を目指す。一方、三洋の佐野精一郎社長も「パナソニックからの物心両面での支援が具体化されることで、当社は非常に大きなアドバンテージを得る」と語った。

パナソニックが三洋を子会社化する最大の狙いは、成長性の高い三洋のエネルギー関連事業を取り込むことだ。三洋はモバイル機器等に使うリチウムイオン電池の世界首位で、同電池はハイブリッド自動車の電源としても大きな市場が期待されている。また、太陽電池においても、三洋は業界有数の技術力を有している。今回の三洋買収を機に、こうしたエネルギー分野を新たなグループの戦略事業に位置づける。パナソニックはシナジーを得るために1000億円規模の戦略投資を検討しており、自動車用リチウムイオン電池や次世代太陽電池の研究開発・設備投資など、エネルギー関連にその多くを充当する方針だ。

なお、金融3社は三洋普通株の実質7割相当(3社保有の優先株は1株を普通株10株に転換可能)を保有し、これをすべて取得すると買収総額は約5600億円。1株=131円の取得価格の根拠について、大坪社長は「三洋単独の価値、そして、われわれと一緒にやることで期待できるシナジー。その2つを合算したうえで今回の価格を決めた」と説明した。

金融3社が保有する株式取得だけで三洋を子会社化できるが、金融商品取引法は3分の2以上の支配権を握るTOBの場合、全株主に門戸を開くよう求めており、今回のTOBは一般普通株主も対象とする。仮に一般株主からの応募が膨らんだ場合でも全株を買い付ける。ただし、TOB価格は直近株価を下回る条件のため、現実的には一般株主からの応募は極めて限られよう。このため、東京証券取引所が上場廃止基準として定める「株主数が400人未満」、「流通株式数が5%未満」等の条件に三洋が抵触する可能性は低い。仮に抵触した場合には、新株発行等による対応策をとる方針だ。

なお表記の来10年3月期業績予想(含09年4~9月期)には、三洋子会社化の影響を反映していない。
(渡辺 清治)


《東洋経済・最新業績予想》
(百万円)    売 上  営業利益 経常利益  当期利益
◎本2008.03  9,068,928 519,481 434,993 281,877
◎本2009.03予 8,500,000 340,000 100,000 30,000
◎本2010.03予 8,500,000 280,000 240,000 140,000
◎中2008.09  4,343,711 228,154 203,296 128,492
◎中2009.09予 4,250,000 130,000 110,000 65,000
-----------------------------------------------------------
         1株益¥ 1株配¥
◎本2008.03  132.9 35 
◎本2009.03予 14.5 45 
◎本2010.03予 67.6 45 
◎中2008.09  61.6 22.5 
◎中2009.09予 31.4 22.5 

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