今回は、前回説明したメディア接触の特徴とエンゲージメントのポイントを母親タイプ別に具体例を用いながらより詳しく紹介します。

セレブ・ママ

　社交性が高く、良き妻・母でありたい意識が強いセレブ・ママは、どの分野の会話にもついていける情報を質・量ともに兼ね備えていたいという願望があります。そのため全方位に意識を向け、デジタルも含めた様々なメディアに積極的に接触しています。有益な情報収集に対してお金を惜しまず、特に有料テレビや携帯電話のインターネットサイトへの接触が他のタイプよりも高い結果が出ています。セレブ・ママは、「特別であること」に惹かれる傾向があり、会員制サービス等、「特別感を彼女たちに味わわせてあげること」が有効的なアプローチのひとつと考えられます。

ミーハー・ママ

　流行に敏感で、買い物が大好きなミーハー・ママは、どちらかと言えば子どもよりも自分自身のライフスタイルをいかに満喫させるかに関心があるため、インターネットを通じてのトレンド情報収集や自分のための買い物に積極的です。他の母親タイプと比較して、ヤフーオークションや楽天などのネットショッピング利用率、掲示板への書き込み率、携帯電話のクーポン利用率が高いのが特徴的で、デジタルツールを上手に使いこなしていることが明らかになりました。常に最新の情報に触れていたいこの層へは、「情報をいかに探してもらうか」、また「情報をいかに積極的に発信してもらうか」がキーとなります。

ナチュラル・ママ

　メディアからの情報を鵜呑みにすることなく、自分の価値観に合う情報だけを吟味、選択するナチュラル・ママは、子どもに質の高い知識を伝承していくことに関心があります。知識欲の高い彼女たちは、新聞に積極的に接していることが明らかになり、「新聞を読むことが好き」と答えた割合も他のタイプに比べて10ポイント以上も高く（「リアルマザーズVol.4」の調査結果より）、朝日新聞、日本経済新聞の両紙を毎朝読むという母親もいるほどです。もうひとつの特徴としてラジオへの接触の高さが挙げられます。よく聴いているラジオ番組はニュースや音楽番組。家事をしながら情報が得られるラジオは効率のよいメディアとしてナチュラル・ママに人気があります。表面的な情報に流されない彼女たちには、情報の背景にある「信頼性の高いストーリー」をきちんと実証できるかがエンゲージメントのポイントとなってくるでしょう。

やりくりママ

　家計を担うことを使命とし、節約を楽しみながら育児をするやりくりママ。このタイプのママが積極的に接触しているメディアは、家計への影響力が最も高い新聞の折込チラシ。お得情報に敏感な彼女たちは、朝の情報番組を流し見しながら複数のチラシを比較し、特売するスーパーをはしごすることもしばしば。また店頭のPOPに影響されやすく、常に情報比較していることが伺えます。もうひとつの特徴として、PCや携帯のメールマガジン登録数が他のタイプと比較して最も多いという結果が出ています。お得情報に関心が強いためマクドナルドやフルーツメールなどの割引クーポンや懸賞情報に登録している人が多いようです。このタイプには、いかに「お得感を味わわせてあげるか」が大事なエンゲージメントのポイントになってきます。

脱力ママ

　マイペースで情報感度が低くフォロアータイプの脱力ママは、どのメディア接触にも大きな特徴がありませんが、インターネットと新聞への興味は他のタイプ並みにあります。受身的な彼女たちは自分から進んで情報収集するというよりも、その都度、必要な情報を調べる傾向があります。有料コンテンツの利用率がセレブ・ママに次いで高い結果が出ていることから、必要な情報に対しては、お金のことも気にしない気持ちが多少高いと言えるでしょう。また時間をかけて情報検索することを好まない彼女たちには「わかりやすく簡単な方法で情報にアクセスできる」ことが重要となります。脱力ママに対して積極的に情報提供し、彼女たちの関心を惹こうとするよりも、セレブ・ママ、ミーハー・ママのような「情報感度が高いインフルエンサーから影響を受けるまで待つ」というのも、もうひとつの方法として考えられます。

　このように母親達が同じ媒体に接したとしても、情報の捉え方やメディア接触後に生じる感情や行動が、タイプ別の価値観によって大きく異なることが明確になりました。「ターゲット＝母親」という安易なターゲット設定では、母親達の心に響くコミュニケーション作りをすることは難しいでしょう。メディア戦略と共にエンゲージメントポイントを追及し、母親達とのエモーショナル・ボンディング（感情的な絆）を構築することがますます重要になってきています。

＜母親タイプ別コミュニケーションのポイント＞

母親タイプ別　コミュニケーション攻略方法
～どのタイプに、何を、どのメディアで、どう伝えますか？～