年収や規模を知るだけの「企業研究」は間違いだ 人事が語る「本当に知って欲しい会社の中身」

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よい企業は、自社に誇りを持っている傾向が強いので、堂々とオープンな姿勢で対応してくれることが多く、質問をすれば、コンプライアンス違反になるような機密情報以外は、喜んで教えてくれるはずです。逆にブラック企業の場合、知られたくないことが多くあり、余計なことを知られたくないので、情報が限定的で、発信する情報も偏っていることが多いです。

もうひとつ、経営理念(企業理念も同義とここでは捉える)について、どれだけ重要視すればよいかというのを聞かれることもよくあるので、正しい正しくないは別として、自分の見解として触れておきます。

経営理念を把握することは、自分は重要だと思っています。なぜなら、理念とは、その企業の根本の考え方、存在意義を示すものであり、企業の価値観が、集約されているものだからです。そこから企業の考え方も見えてくるので、それに自分が心から共感できるか、相性を知るうえでも参考になります。

ただし、現実的には、経営理念を大事にしていない企業も少なくありません。知らないという社員もいれば、そもそもない企業だってあります。選考中に会った社員に「経営理念を言えますか?」と聞いて、一語一句間違えず答えられる社員は、決して多くはないでしょう。よほど熱心な経営理念教育をしている企業でない限り、普段から言葉にすることが少ないからです。

よい企業は経営理念が自然に浸透している

しかし、答えられないから、理念が浸透していないというわけではありません。正確に答えられない社員であっても、その社員の仕事のエピソードを聞いて、経営理念を改めて見てみると、その仕事内容や行動に表れていることがよくあります。

そして、優良企業であれば、社員がつくりあげている強みや価値に、その企業の経営理念が反映されているはずです。理念が組織に浸透しているかどうか理解する意味でも、その企業の強み、価値について知ることは重要です。たとえ経営理念がない企業でも、強み、価値を知る中で、その企業が大事にしている価値観がしっかり感じられ、それが素直に共感できるものであれば、悪い企業ではないと思います。

なお、ブラック企業の場合、明確な強み、価値が見えないところも多いので、ブラック企業を避ける意味でも、企業の強みや価値を研究することは有効だと思います。

強み、価値をつくり続けなければ、企業は顧客に選ばれず、存続していけません。勝ち残る優良企業は、新しく入る社員に、その強み、価値を、一緒に真剣につくっていける仲間を求めています。強み、価値をつくって、この世の中に、どのような世界を創造していく自分になっていきたいのか。企業研究を通して、ぜひ見つけてみてください。

豊川 晴登 人材ビジネス企業 人事・採用担当

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とよかわ はると / Haruto Toyokawa

1974年生まれ。ベンチャー、中小、大手上場企業など複数の企業に勤務し、小売、金融、保険、アウトソース、人材等の事業領域で人事を中心としたキャリアを積む。事業責任者、上場企業の執行役員等の経験を経て、現職に至る。GCDF-Japanキャリアカウンセラー。

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