会社の粉飾を知って悩んでいます 【キャリア相談 Vol. 24】

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質問者の方は、拾っていただいた親会社社長に恩義を感じているとおっしゃっています。現在の行為や考え方は、本当に恩を返しているのでしょうか? そして本当に守りたいものがあれば、何をやってもどんなに傷ついても守るべきです。それをしなければ残るのは後悔です。

加えて、強がっていた経営トップや上司でも、いざとなれば自分だけ助かるにはどうしたらよいかと画策するのが、不祥事の起きたときのいつものパターンです。それくらい人は弱いものです。

ちなみに大切な人を守ったとしても感謝されるとは限りません。事件が起これば混乱の中で誤解によって、死ぬほど恨まれることもよくあります。それでも正しいと思うことを行えば後悔の量は減らせます。以前にもこの連載で申し上げましたが、筆者の勤務先のCEO冨山和彦は、決断に迷ったらできるだけ短い言葉で家族や友人に説明できるほうを選ぶと言っています。「長い言葉は言い訳が混じるから」と。

質問者の方は現在、非常に中途半端な立ち位置にいると思います。極論すれば、家族を養うことが第一優先なら、どんなに卑怯になってもいいわけです。今すぐ粉飾企業を辞めて、少しでも安定した職につくことも、もちろん選択肢のひとつです。まだお若いことですし、死ぬ気で探せばどんな仕事でもあることでしょう。大事なことなので最後に繰り返しますが、あなたにとっていちばん大切なものは何でしょうか? いつの日かお子様にちゃんとお話しできる行動は何でしょうか? よくお考えいただければと思います。

この原稿を喫茶店で師走の街を眺めながら書いていたら、都合よくジョン・レノンのHappy Christmas(War is Over)が流れてきました。皆様、どうぞ楽しいホリデイシーズンをお過ごしください。

※ 12月19日(水)に、塩野氏が、『20代のための「キャリア」と「仕事」入門』の発売を記念し、外資系金融・コンサル業界を目指す学生向けに無料セミナーを開催します。参加を希望される方は、こちらよりお申し込みください。

塩野 誠 経営共創基盤(IGPI)共同経営者/マネージングディレクター JBIC IG Partners 代表取締役 CIO

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しおの まこと / Makoto Shiono

国内外の企業への戦略コンサルティング、M&Aアドバイザリー業務に従事。各国でのデジタルテクノロジーと政府の動向について調査し、欧州、ロシアで企業投資を行う。著書に『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』(NewsPicksパブリッシング)、『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか?』(KADOKAWA)等、多数。

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