被災地発の自転車イベントはなぜ実現したか 巨大イベントを実現させた、もうひとりの"爆速男"

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「東北のために何かやりたいと思っていたけど、できないでいた。だから自分が好きな自転車で東北に来て、いろんなことを感じられて本当によかった。ありがとう」

そんなコメントもいただいた。自転車は好きだけど、場所なんて関係なく、ただ走って帰るという人もいるのかなと思っていたが、そんなことはなかった。運営スタッフだと知って僕に話しかけてくれた人は、みんな「東北への思い」を語ってくれた。それを聞くたびに、ぐっときて目頭が熱くなった。

沿道で参加者を応援する近隣の人たち、そして地元の商店や企業の人々。仮設住宅に住むおばちゃんも「知り合いが出走するから」と待っていて、手を振ったりしていたらしい。それを見て「東北、頑張ってるな」と感じたと熱く語ってくれた人もいた。

出走者だけじゃなく、スタッフも応援に来てくれた人も、終わった後、すごくうれしそうな顔をしていたのが印象に残った。これが「大成功だった」と断言してしまう理由だ。

このプロジェクトを事務局長として主導したのは、「ヤフー石巻復興ベース」復興支援室長の須永浩一。僕の直属の上司である。須永は、東京の人や東北の人を何百人も巻き込んでコツコツと準備を進めていった。

「起爆剤っぽい、大掛かりなもの」をやりたい

ツール・ド・東北がどうやって実現したかということに話を戻そう。

前述のようにフェイスブックに宣言した宮坂は、スポーツ好きの知り合いたち(いろいろな会社のエライ人たち)を、どこかのカフェに集めて私的な会議を開いたという。社長に就任する前のことだ。そしてそれを、早速、自転車イベントの企画書としてまとめた。

しかしながら震災発生後から間もないこともあり、時期尚早ではないかとも考え、その企画はお蔵入りになっていた。

それがしばらくして、さまざまな縁があり、2012年7月、河北新報社の石巻総局が入るビル内に「ヤフー石巻復興ベース」を設けることになった。

これが宮坂にとってチャンスになった。河北新報社は昭和20年代から「ツール・ド・東北」を主催していたのだ。

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