日清「大坂なおみ動画」炎上→削除問題の本質 グローバル企業として欠けていた視点とは

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そうであれば、現在日清に満足している顧客も、大坂なおみをハイチ人のハーフから白人に変えたのよりさらに早く、グローバル規模の恐ろしい抗議者の群れに変わることもありえる。

それが、世界的に注目されている人物を起用したと同時に日清が背負わなければならない重圧なのである。彼女は日本だけで認知されているタレントではない。国際的なスーパースターであり、今日世界で最も賞賛される有色人種アスリートの1人である。世界が、中でも世界の有色人種の人々が、日本の企業が彼女をどのように利用しているか注目していないと考えるのは短絡的だ。

世界市場で真の勝者になるために必要なこと

日清は、ニューヨーク・タイムズ紙に対して、広告のクリエイティブプロセスには大坂もある程度関わったと説明しているが、結果的に彼女を「誤用」し続けるのであれば、世論という法廷では責任を問われることになるのではないだろうか。

「個人的には、日清は今回の件を受けて、人々をどうやって描くかを見直すべきだと思います」と、東京に住む黒人と日本人のハーフ、ケイティ・サチコ・スコットは言う。「なおみは黒人であり、日本人でもある。彼女がどういう人なのかは、私たちが決めることではないと理解する必要があります」

日清は今回、日本が「HUNGRY TO WIN(頂点への挑戦)」を本気で目指しており、進歩的かつ革新的な国であること、そしてそれを率いるのは日清だと世界に示す機会を逃した。だが前進する機会はほかにもあるだろう。同社は「今後は、多様性をより尊重したい」とコメントしているが、具体的にそれに向けて何をどのように見直すかは明らかにしていない。

大坂は目下絶好調で最高の選手である。願わくば、日清、そして大坂をスポンサーするすべての企業が、ただ「頂点へ挑戦する」だけでなく、世界市場で真の勝者となるために必要なことを進んで行ってくれればいいのだが。それでこそ、大坂ような勝者にふさわしい企業と言えるのではないか。

バイエ・マクニール 作家

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Baye McNeil

2004年来日。作家として日本での生活に関して2作品上梓したほか、ジャパン・タイムズ紙のコラムニストとして、日本に住むアフリカ系の人々の生活について執筆。また、日本における人種や多様化問題についての講演やワークショップも行っている。ジャズと映画、そしてラーメンをこよなく愛する。現在、第1作を翻訳中。

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