【産業天気図・非鉄金属】銅相場が大幅下落、非製錬も軒並み大打撃。非鉄金属を覆う雨雲は消え去る気配なし

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 08年10月~09年3月   09年4月~9月

前回の産業天気図で「業界全体を覆う雲が一層ぶ厚くなる可能性もある」と指摘したが、非鉄金属業界を取り巻く環境は一層の悪化へと向かっている。2008年度後半にはとうとう「雨」が降り始め、09年度前半もその雨は止みそうにない。

その主たる要因が銅相場の急落だ。自動車も含めた電子機器類の素材としてだけではなく、電線など社会インフラにも不可欠な金属である銅は、日本の非鉄各社においても製錬事業の大きなウエイトを占めている。

07年夏のサブプライム問題が顕在化して以降、主な金属市況が下落に向かう中でも、銅相場だけは高止まりが続いていた。しかし、今年9月のリーマンショックと前後して、銅価格もついに急落し始めた。12月には、一時1トン3000ドル近辺まで下落。これは7月のピーク時(約9000ドル)の3分の1の水準だ。主要各社の08年10月~09年3月想定は、住友金属鉱山<5713>が6000ドル、三菱マテリアル<5711>が約4400ドルであることを考慮すると、銅相場要因だけで軒並み各社発表の業績予想から大きく下振れする公算が高い。

ここ数年、川上に当たる鉱山会社の寡占化が進む中で、日本の製錬メーカーの価格影響力は相対的に低下してきた。その中で、原料鉱石調達条件は悪化の一途をたどっており、各社は電子材料や自動車部品などの非製錬事業へシフトするなど対応を進めていた。ところが、こちらも世界経済の減速を受け、需要が激減している。たとえば、三井金属<5706>の場合、半導体実装材料のTABテープなどに経営資源を集中させ、世界首位級のシェアを維持してきた。しかし、安価なアジア品との価格競争が激化し、09年3月期同事業は60億円程度の赤字となる見通しだ。DOWAホールディングス<5714>も、07年に金属加工の分野でヤマハ系の伸銅品2社を買収し、車載用伸銅品で国内シェア首位の座を確かなものにした。ところが、折からの自動車業界の大減産を受け、今期は当初計画を大幅に下回ることになりそうだ。

景気減速を受けて、これまで一方的な売り手優位だった原料調達条件が多少なりとも緩和に向かうであろうことは、09年度の好材料といえるだろう。ただ、それは金属需要の減退と裏腹の関係にある。一時は空前の市況高を謳歌してきた製錬部門の不振に加え、事業ポートフォリオの観点から精力的に進めてきた多角化路線までもが全面総崩れの憂き目にあっているのが現状。来期も非鉄業界を覆うぶ厚い雨雲は消えそうにない。
(猪澤 顕明)

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